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700万年前の猿人化石って?

  科学編;河合 信和記者(朝日新聞総合研究センター)

ポン

700万年前のサルヒトカセキ?

河合記者

えらいねぇ。新聞を読んでるんだ。でも、それは「えんじん」と読む。猿人は、人間の仲間では一番古い。猿の仲間から進化し、立って歩いたんだよ。

ジャン

あっ、わたしその化石の発見、知ってる。学校の先生がおどろいてた。たしかアフリカで見つかったんでしょ。

河合記者

そう。フランスの大学の先生がひきいる国際研究チームが、アフリカ中部のチャド共和国のトロスメナラ地域で見つけたと、イギリスの科学誌「ネイチャー」に発表した。

ケン

すごい発見なの?

河合記者

猿人の化石で最古なんだ。とてもすごい発見さ!

中部アフリカで発見 人類誕生の見直し

アフリカのチャド共和国で見つかった約700万年前の猿人の化石(「ネイチャー」7月11日号」

 ケン 「最古」ってどういうこと?。

 ―2000年の暮れから去年にかけて、古い猿人の化石がアフリカのケニアとエチオピアで次々に見つかった。それらの化石から、チンパンジーなど類人猿から分かれた猿人が、立って歩くなどし始めたのは500万―600万年前とされた。

 ジャン その年代が早まったのね。

 ―そう。さらに100万年も古い700万年前となったわけさ。この年代の推定は少しあやふやなところがあるので、600万年前くらいになるかもしれないけどね。

 ポン 古さのほかにも、すごい理由があるの?

 ―うん、あとふたつある。まず、猿人の中でも古い化石はすべて、東アフリカで見つかっていた。だから人類が進化した場所は東アフリカだと思われていた。

 ジャン でも、チャド共和国は中部アフリカにある。

 ―その通り。人類の誕生した場所は東アフリカといい切れなくなったんだ。

 ケン もうひとつの理由は?

 ―進化したばかりの人間は、あまり時間をかけずにアフリカ各地に広がったかもしれないとわかったこと。南アフリカでも猿人の骨がたくさん見つかっているんだよ。

 ケン ふーん。

 ―専門家をおどろかせていることは、まだある。

 ポン なになに?

 ―発見された頭の骨の完全さに興奮したんだ。なにしろ猿人の骨は何百万年も前のものだから破片ばかりで、これほど完全な形で見つかるのはめったにない。おかげで、いろんな情報がこの骨から引き出せそうだと期待されているよ。

 この化石の猿人は、サハラ砂漠の南の地域をさす「サヘル」と、国名にちなみ「サヘラントロプス・チャデンシス」と名づけられたよ。

 ケン サヘラントロプスは、ぼくらのご先祖さまだね。

 ―うーん。それはどうかな。

 ジャン えっ、ちがうの?

 ―ご先祖さまとなれば、われわれは直接の子孫ということになる。でも最近、わたしたちとちがう人間の仲間がたくさんあらわれては消えたということがわかってきたんだ。

 ポン よく、わからないなぁ。

 ―いま、生物の分類では世界中の人が同じ仲間だ。でも大むかしは、そうじゃなかった。たとえば3万年前のヨーロッパには、わたしたちの直接の祖先のほかに、ネアンデルタール人という、ちがうグループの人間も住んでいたんだ。

 ジャン その人たちはどうなったの?

 ―理由ははっきりしないけど、子孫をのこさず絶滅したらしい。ほかに中国にいた北京原人や、インドネシアのジャワ原人も絶滅したと考えられている。

 ケン ぼくたちの直接のご先祖さまはどこにいたの。

 ―20万年前ごろアフリカにあらわれ、9万年前ごろに世界中に広がったらしい。アフリカは、さまざまなグループの人間の仲間が進化した場所だった。200万年前の東アフリカでは、同時に4種類ものちがう人間たちがくらしていたとみられているよ。

 ポン へぇー。

 ―猿人からヒトへの進化の歴史は、まだわからないことが多い。今回の発見が人類のなぞを解くカギのひとつになるかもしれない。

(2002年7月20日)


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