星野 哲記者(朝日新聞電子電波メディア本部データベースデスク)
学校給食のメニューが急にかわったんだ。牛どんが親子どんになったり、ビーフカレーがポークカレーになったりしたんだよ。
ああ、アメリカで去年暮れ、BSEに感染しているウシが見つかった影響だね。
BSE?
ウシの脳がスポンジみたいになって死んでしまう病気だ。感染したウシの特定の部分を食べた人にも影響が出るおそれがあるんだ。
それって狂牛病とよばれていた病気でしょ。でも、どうしてアメリカのウシが病気になったのが日本にひびくのかしら? くわしく教えて。
輸入禁止で牛肉が値上がり
BSEって? 牛海綿状脳症(うしかいめんじょうのうしょう)。ウシの脳がスポンジのようになり、全身がまひして死んでしまう病気です。1986年にイギリスで初めて報告され、感染したウシは今回のアメリカをふくめて23か国で確認されています(日本時間1月15日現在)。
病原体は「異常プリオン」というたんぱく質。これに感染すると、もともと脳にある正常なプリオンが異常なプリオンになってたまります。感染が世界に広がった理由は、異常プリオンにおかされた脳などからつくられた「肉骨粉」というえさが出まわり、それをウシが食べたためとみられています。しかし、はっきりした感染ルートはまだつきとめられていません。 |
ジャン そういえば、日本でも以前、BSEのウシが見つかって大さわぎになったわね。
――日本では2001年に初めて発見されてから、これまでに九頭の感染がたしかめられた(15日現在)。最初は多くの人が牛肉を買わなくなるなどの影響が出た。でも、いまでは食用のウシすべてをBSEに感染していないか検査してから、肉が売られている。
ケン じゃあ、なんでぼくたちの給食のメニューをかえるの? 日本のウシが安全なら問題ないじゃない。
――いや、日本は牛肉の多くを外国からの輸入にたよっている。国内で1年間に消費する牛肉のうち、約3割はアメリカ産だ。輸入牛肉にしめる割合は4割以上でオーストラリア産に次いで多い。BSEに感染したウシが見つかって、日本政府はすぐにアメリカからの牛肉の輸入を禁止した。
ジャン 国民の健康を守るためには、当然のことね。
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アメリカでBSEに感染したウシが見つかったのをうけて、アメリカ産牛肉を売り場から回収するスーパーも出ています=先月24日、福岡市博多区で |
――そうだね。だけど、輸入の半分近くをたよっていただけに影響は大きい。たとえば「吉野家」という大手の牛どんのお店は、このまま輸入禁止がつづいたら2月中に牛どんを売るのをやめるそうだ。ハンバーガーチェーン店の「マクドナルド」でも、アメリカ産牛肉が使われていた商品の販売をやめたよ。
ポン 牛肉が食べられなくなっちゃうの?
――いや、その心配はないと思うよ。でも、牛肉の値段は上がりそうだ。アメリカ産の分をオーストラリア産や国産の牛肉でうめ合わせようとしているからね。オーストラリア産の牛肉は1月になってから先月半ばよりかなり値上がりしている。
ジャン ニュースでは、アメリカ政府が調べたら、今回BSEに感染したウシはカナダ産だったといってたみたいだけど……。
――うん。だからアメリカは「アメリカ産は安全」と主張し、1日も早く輸入禁止を解くよう日本にもとめている。
ケン それならさっさと輸入を再開すればいいじゃない。
――でもカナダ産のウシは、おとなりの国アメリカにたくさん入っている。しかもアメリカでは日本のようにすべてのウシを検査してはいない。
一年間に消費される3500万頭のうち、BSE検査をしているのは歩くようすがおかしいウシなど2万頭だけ。全体の1パーセントにもみたない。
ポン えっ?
――だから日本はアメリカに「日本と同じように検査して安全をたしかめてくれなければ輸入を再開するのはむずかしい」といっている。でも、アメリカはいまのところ応じていない。
ケン 輸入禁止前に日本に入ったアメリカ産の牛肉は安全なの?
――BSEの原因となる物質は、ウシの脳やせき髄など特定の場所だけにあるといわれている。この部分については国が回収するように指示した。これ以外は食べても健康に影響がないからと、国も回収はしていない。だけど、スーパーによってはアメリカ産の牛肉を回収するところも出ている。注意は必要だけど、あまり神経質になりすぎてはいけないよ。
ポン うん。
――この問題にからんで、ほかにもこまったことが起きているんだ。
ケン どんな?
――あるスーパーが、アメリカ産牛肉を「国産だ」とうそをついて売っていたことがわかった。消費者の心配につけこむようなこうした行動はとても悪質でゆるせない。お店には、産地や飼育方法などについての正しい情報を出してほしいし、国にはきちんとチェックしてもらわないといけないね。
(04年1月17日)
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