古西 洋記者(朝日新聞社会部)
こないだの日曜日に、お父さんが見ていたNHKの番組で、おじさんやおばさんたちがずーっと話し合いをしていたよね。
「NHKに言いたい」という番組だったけど、NHKのえらい人がみんなからしかられていたみたいだった。
NHKで働く人たちの中に、やってはいけないことをしていた人がいたことがわかったから、どうしたら、そういうことがなくなるか、みんなで考えていたんだよ。
NHKって民間放送(民放)とはちがうのかしら?
受信料を集めて運営する公共放送なんだ
――もうすぐ大みそかだよね。その晩のNHKの番組といえば?
ジャン 紅白歌合戦! ことしはわたしの好きな歌手が3人出るの。
――紅白歌合戦をつくるにはたくさんのお金がかかる。舞台をつくったり、出演料をはらったり。そうしたお金は「制作費」とよばれている。ところが、番組をつくる責任者のチーフプロデューサーという役目の人が、別の番組の制作費の一部をごまかして自分で使ってしまったうたがいが出てきて、とうとう警察に逮捕されたんだ。
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東京・渋谷のNHK(上)と、海老沢勝二会長(右) |
ケン 悪いことをしたとうたがわれた人が逮捕されるのは、テレビのニュース番組でよく見るけど、テレビ局の人が逮捕される方になっちゃったんだね。
ジャン とくにNHKは公共放送でしょ。お母さんは「わたしたちがおさめている受信料を何だと思っているのかしら」っておこっていってたわ。
ポン 公共放送とか受信料って何なの?
――テレビをおいた家は、かならず、NHKと受信契約をむすんで、受信料をはらうことになっている。はらわなくても罰則はないんだけどね。
ポン 「うちはNHKは見ません」っていう人は?
――放送法っていう法律で、テレビ放送を見られる設備をおいた人はみんな、NHKと受信契約をむすんで受信料をはらうことになっている。NHKは、それだけ、みんなから集めた受信料を大切に使う責任をおっていることになるよね。
ケン NHK以外のチャンネルはどうなの?
ジャン ほかのふつうのチャンネルは、1円もはらわずに見ることができるんでしょ。
――そうだね。でも、ふつうの民放にはコマーシャルがあるだろ。民放は会社から広告料をもらってその会社の製品のコマーシャルを流す。こうした収入で番組をつくって放送しているんだ。
ケン ふーん。なぜ、NHKだけちがうの?
――テレビ放送が始まったのは、いまから50年ほど前なんだ。NHKは日本全国のすべての家庭でテレビを見ることができるようにする仕事をすることになった。それだけじゃない。いい番組をつくって、テレビの技術を発展させることもになうことになった。それが公共放送なんだ。最初のころは、NHKのほかは民放はひとつだけだったんだ。
NHK(日本放送協会)
1926年、ラジオ放送の東京放送局など3局がいっしょになってできました。日本でただひとつの公共放送(こうきょうほうそう)の機関です。1950年、放送法にもとづく特殊法人(とくしゅほうじん)として新たに設立され、53年にテレビ総合放送を開始しました。経営の最高責任は、国会の承認(しょうにん)をえて首相が任命する経営委員会にあり、経営委員会が会長を任命します。 |
NHKの不祥事(ふしょうじ=いけないこと)と受信料不ばらい
7月に元チーフプロデューサーが番組制作費を不正に使っていたことがわかりました。その後も、元ソウル支局長が経理(お金の処理)をごまかしていたり、職員が受信料を自分で使っていたことなどが次々と明らかになりました。こうしたことにおこって、受信料をはらうのをこばんだり、先のばししたりする人がふえ、9月末で3万1千件だった受信料の不ばらいは、11月末には11万3千件に急増しました。 |
ポン うちのテレビはケーブルテレビで、30チャンネル見られるよ。
――たしかに、いまでは全国で、たくさんのチャンネルが見られる。だけど、視聴率にとらわれずに、いい番組をつくるという、公共放送のもうひとつの仕事は大切と考えられているようだね。
ケン その番組をつくるNHKの人たちが、お金を自分で使ったらいけないよね。
ジャン 上司(上役)の人が気づいたのに、3年間も放っておいたって、新聞に書いてあった。お父さんは「視聴者を裏切った」といっていたわ。
ポン 幼稚園の先生が「まちがったことをしたら、どうしたら2度としないようにするか、考えなさい」っていってた。
――その点でも、NHKはあやまったんだ。たとえ、自分たちの仲間のことでも、何でそうしたことが起きたのか、を調べて番組で報告するのが、放送局や新聞社の使命なのに、NHKはなかなかできなかった。そうした態度におこった人たちが「もう受信料をはらわない」っていい出したんだ。
ケン お母さんは「NHKは、受信料を集めるんだから責任の重さをしっかり受けとめてほしい。どう反省して出直すかしっかり見守りましょう」っていってた。
(2004年12月25日)
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