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原油が値上がり なぜ?

中川仁樹記者(朝日新聞経済部)
ケン

 パパが、ガソリンの値段が上がってたいへんだっていってたよ。

ジャン

 何で高くなったのかしら。

中川 記者

 ガソリンのもとになる原油の値段が上がっているからなんだ。これには、アメリカのハリケーンやイラクの情勢なんかも関係しているんだよ。

ポン

 ふーん。原油って何なの?

イラク情勢やハリケーン被害で生産のびず

原油の値段がどんどん上がるために、半年前から値段を表示しなくなったガソリンスタンド=9月9日、福岡市で

経済好調な国の使用ふえる
「まだ上がる」との不安感も

 


 ――原油は、ガソリンや灯油など石油製品の原料となる天然の油。数億年前の海にいたプランクトンや海そうの死体がつみ重なってできた化石燃料で、地下数千メートルにあるんだ。古くから知られていて、エジプト人らはミイラがくさらないように石油の一種を使っていたらしい。

 ケン そんな昔から使っていたんだ。

 ――うん、そして1800年代中ごろから、照明やエンジンの燃料として広まったんだ。いまでは、プラスチックや衣料品の原料にもなっている。世界で1日に使われる原油の量は約八千万バレル(1バレルは約159リットル)と、東京ドーム10杯分。ちなみにバレルは「たる」という意味で、昔、アメリカで酒だるに原油をつめて輸送したなごりだよ。

クリアブックがあまり出回らなくなり、はり紙が出された店。原油の値上がりは、石油からつくる製品に広く影響をあたえます=6月、大阪市で

 ポン 日本でもとれるの。

 ――いや、ほぼ100パーセントを外国にたよっていて、そのうち9割がサウジアラビアなど中東からだ。中東には世界の石油埋蔵量(埋まっている量)の6割があるんだ。

 ジャン 原油の値段はどうやって決まるの。

 ――原油は、多くの国や企業が参加する国際市場で売り買いされる。値段は、原油のとれる量と買いたい量とのバランスで決まるんだ。
 経済が成長している中国は、原油を買う量をふやしている。一方で、イラク戦争などで中東の生産量はのびなくて、原油が不足する心配が高まった。さらに、超大型ハリケーンがアメリカをおそい、原油生産施設をこわしたことで危機感が強まり、代表的なアメリカの原油の値段が1年前の2倍をこえたんだ。

 ポン 高くなったら買う人がへるね。

 ――そうでもないよ。アメリカは景気が好調で原油を使う量が落ちていない。中国も国内の石油製品を原油ほど値上げしていないため、輸入量がへらない。だから、原油の値段もまだ上がると予測する人が多い。

ガソリン以外も影響ジワリ
「備蓄」使うことにしたが…

 

 

 ケン ぼくたちの生活には、どうひびくの。

 ――車のレギュラーガソリンは一リットルあたり130円と、1年半で25円も上がった。原油の値上がりが原因のひとつで、かまぼこやさつまあげなどを約15年ぶりに値上げした会社もある。

 ポン えっ、かまぼこって原油でできてるの?

 ――まさか。漁船の燃料代が上がって、原料にする魚のすり身の仕入れ値が上がったからだよ。
 原油を原料や生産に使う会社はたいへんだが、製品の値段を上げなくてすむよう、いろいろなくふうをしているんだ。たとえば、レジ袋をつくる工場は、できるだけ厚さをうすくするとかね。

 ジャン 原油の値段を下げることはできないの。

 ――各国は、何かあったときのために、原油をためている。これを「備蓄」という。日本も、約170日分を備蓄しているんだ。
 原油をたくさん使う国が加盟する「国際エネルギー機関(IEA)」は最近、計6000万バレルの備蓄を手放すように加盟国にたのんだんだ。出回る原油の量がふえれば、値段がおさえられるからね。

 ポン 昔、原油が値上がりして、大さわぎになったことがあるんでしょう。

きょうのポイント
▽原油は、ガソリン、プラスチック、衣料などさまざまな製品のもとになっている。
▽イラクの情勢やアメリカのハリケーンで生産がのびないが、経済が好調で原油をたくさんほしい国があるのが、値段が上がる原因
▽日本は原油のほぼ100パーセントを輸入にたより、約9割を中東から輸入

 ――1970年代の2度の石油危機のことだね。中東の産油国が中心になってつくる「石油輸出国機構(OPEC)」が、油田を次々と国のものにし、原油価格が一気に15倍以上になった。
 このとき、石油がなくなり品不足になるのではという不安から、トイレットペーパーなどを買いだめする人が出てパニック状態になった。

 ケン いまはそんな雰囲気はないよ。

 ――当時はエネルギーの約八割を原油にたよっていたけど、いまは約五割しかたよっていない。天然ガスや原子力などエネルギーの種類がふえ、省エネも進んだから、原油の値段が景気へあたえる影響は、以前の3分の1から6分の1ていどまで下がった。
 でも、このまま上がりつづければ、航空運賃や輸送費など、みんなの生活にもジワジワと影響が出てくるだろうね。

【日本と石油】
日本は原油のほぼすべての量を輸入にたよっています。2004年の輸入量は2億4000万キロリットル。輸入先は中東の国々全体で約90%(パーセント)をしめ、サウジアラビアとアラブ首長国連邦の2か国で全体の半分をしめます。
 日本は2003年、世界の全石油輸入量の約12%を輸入していて、アメリカにつぐ第2位の石油輸入国です。また、石油を使う量は世界全体の約7%で、アメリカ、中国についで3番目に多くなっています

 

(2005年9月18日)

 


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