高原 敦記者(朝日新聞外報部)
中東のレバノンという国にイスラエルという国の軍隊がせめこんだというニュースを最近よく見るけど、なぜ攻撃しているの?
イスラエル軍はレバノンを爆撃したり、地上部隊がせめこんで占領したりしている。イスラエルとにくみあっているイスラム教シーア派の武装集団「ヒズボラ」の拠点(活動の中心地)をこわして、追いはらおうとしているんだ。
なぜ、いま攻撃しているの?
きっかけは、ヒズボラがイスラエル兵を誘拐したこと。ヒズボラの指導者は「兵士をかえしてほしければ、イスラエルの刑務所にいるレバノン人らを釈放しろ」といい、イスラエルがおこったんだ。
イスラエルが武装集団「ヒズボラ」をつぶそうと
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イスラエルの空爆があったレバノン・ベイルートの街。爆風でふきとばされた子ども用の自転車が路上にのこっていました
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ポン ヒズボラって?
――アラビア語で「神の党」っていう意味なんだ。レバノン人たちが1982年ごろ結成したイスラム教シーア派の過激集団で、戦闘部隊もある。同じイスラム教徒が多いイランやシリアと親しく、援助してもらっているといわれている。一方、ユダヤ教徒の多い国イスラエルは軍隊が強く、中東のイスラム教の国々と仲が悪い。ヒズボラと長年対立してきたんだ。
ジャン レバノンとイスラエルはどういう関係なの?
――イスラエル軍は八二年にもレバノンにせめこんだ。イスラエルと対立していたパレスチナ解放機構(PLO)のゲリラを追い出すためだったけど、その後はヒズボラをやっつけることに執念をもやしてきた。イスラエル軍は2000年までずっとレバノンの領土にいすわっていたんだよ。
ケン レバノンって、あらそいごとが多い国なの?
――いろんな宗教の信者が住んでいる国で、七五年にはキリスト教やイスラム教の民兵軍団と、PLOがあらそう内戦になった。そこにイスラエル軍もせめこんで戦争に。長い戦いやテロで大勢の人が死んだんだ。
ポン ヒズボラもくわわっていたの?
――ヒズボラは自爆テロなどでイスラエルとはげしく戦った。イスラエル軍は被害が多く、レバノンから撤退せざるをえなくなったんだ。だからいまも目のかたきにしている。
ジャン ヒズボラって、テロ集団?
――アメリカはレバノンの大使館を八三年に爆破されたことから、「ヒズボラはテロ組織だ」と悪者あつかいしてきた。一方で中東のイスラム教国には応援している人が多い。
ケン ヒズボラはレバノン人らの組織だけど、レバノン政府は何してるの?
――兵士誘拐でイスラエル政府はレバノン政府におこったけど、レバノン政府は「ヒズボラの攻撃を知らなかったし、みとめてもいない」といっているよ。
ポン イスラエル軍の攻撃は世界にどう思われてるの?
――兵士を誘拐されたからといって攻撃したことに国際的な批判が集まっている。子どもたちをふくめて罪もないレバノンの人が空爆で大勢死んでいるし、ヒズボラもロケット弾をイスラエルにうち返していて、イスラエル人の死者も出ている。さらにイスラエルは国連の施設まで爆撃し、四人の命がうしなわれた。理由ははっきりしないが、国連は「わざとだ」と、おこっている。
ジャン だれか止める人はいないの?
――多くの国がイスラエルに「攻撃をやめて」とたのんでいる。世界でもっとも力を持つアメリカはイスラエルと親しくて、「悪いのはヒズボラだ」といっていた。だけどあまりにも死者が多くなってきたので、各国が部隊を派遣してイスラエルとヒズボラの間にわって入ることを検討しているよ。早くそうなるといいね。
【きょうのポイント】
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▽レバノンにイスラエルがせめこんだきっかけは、レバノン内に拠点をおく武装集団の「ヒズボラ」が、イスラエル兵を誘拐したこと。ヒズボラとイスラエルは長年、対立している。
▽レバノンはいろいろな宗教の信者が住んでいる国で1975年に内戦になり、イスラエル軍もせめこんで戦争になった。その後もあらそいがくり返されている。
▽多くの国がイスラエルに攻撃をやめるようよびかけているが、攻撃ははげしさを増し、死者が多くなってきた。そこで、各国が部隊を派遣して両者の間にわって入ることを検討している。 |
●レバノンをめぐるおもな動き
7月12日 ヒズボラがレバノン南部の国境地帯でイスラエル軍と戦い、イスラエル軍兵士ふたりをつれ去る。
13日 イスラエル軍がレバノン軍やヒズボラの関連施設、橋、道路、空港などを攻撃。その後、空爆は市街地などにも広がり、多くの死者や国内避難民が出ている。
22日 イスラエル軍の地上部隊がレバノン南部の村にせめ入り、村を占領。
25日 国連レバノン暫定駐留軍の関連施設がイスラエル軍の攻撃を受け、4人が死亡。
27日 国連安全保障理事会の公式な会合で、イスラエル政府に事件の調査をもとめる議長声明を採択。
30日 レバノン南部のカナで、市民が避難していた建物をイスラエル軍が攻撃。子どもをふくむ57人が死亡。国際社会の批判が強まり、イスラエルは48時間の空爆停止を表明。
8月2日 イスラエル軍はレバノン南部への空爆を再開し、約50か所を攻撃。地上部隊も南部に数千人を送りこんだ。
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(2006年8月6日)
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