友野賀世記者(朝日新聞政治グループ)
9月になると、国会が始まるよ。
7月の終わりにあった参議院議員選挙では、民主党の人がたくさん当選したんでしょ。
よく知ってるね。政権をとっている党を与党(今は自民党と公明党)といい、それ以外を野党という。参議院で一番多く議席を占めるのが、野党の民主党になったんだ。
そうなると、国会もこれから何か変わるのかしら。
選挙結果を重視、法案は成立しにくくなるよ
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臨時国会で参議院議長に選ばれた民主党の江田五月(えださつき)議員(左端)。自民党以外から参議院議長が選ばれたのは初めてです=7日、国会内で |
――今回の選挙で、参議院では、民主党の議員が、自民党と公明党を合わせた数よりも多くなった。国会では新しい法律など物事を多数決で決めるけど、今の政権とちがう意見を持つ政党が半分以上になったんだ。
ケン そうすると政府の考え通りにならなくなるの?
――そういう場合もあるだろうね。国会には衆議院と参議院がある。参議院では民主党の議員が一番多いけど、衆議院では自民党が半分以上を占めている。衆議院と参議院で、一番議席が多い政党がちがうんだ。
ジャン じゃあ、衆議院と参議院で意見が食いちがったりするのかしら?
――そうだね。新しい法律を作るには普通、最初に衆議院で話し合い、その法律案に賛成かどうか多数決をとる。賛成が過半数(半数をこえる)なら、次に参議院で話し合う。参議院でも賛成が過半数なら法律ができあがる。
ただ、これからは衆議院から送られた法律案に、参議院で民主党とほかの政党が反対することは十分に考えられる。
ポン 新しい法律ができなくなるの?
――難しくなるが、まったくできないというわけではないんだ。つまり、もし参議院で賛成が半数にとどかなくても、衆議院で3分の2の議員がもう一度賛成すれば法律は成立する。今、衆議院では自民党と公明党で3分の2以上を占めるから、最終的に成立させることは可能だ。
ケン それなら参議院で強くてもあんまり意味がなさそう。
――そんなことはないよ。法律案は参議院から先に話し合う場合もある。民主党が自分たちで作った案を参議院で先に話し合うことにしたら、参議院では賛成が過半数を占める可能性が高い。
ジャン でも参議院だけでは成立しないんでしょ。
――そう、次に話し合う衆議院で賛成が少なければ、その法律は成立しない。でも、一番最近の選挙結果は、今の世の中の考え方を最もよく映し出しているといえる。だから、投票した人たちの気持ちを軽んじているという批判をさけるためにも、自民党は「参議院で過半数を取れなかった法律案は全部、衆議院で多数決をやり直す」という方法はとらないだろう。
ケン 民主党は?
――民主党だって、法律案に反対するなら、その理由をちゃんと説明しないと、投票した人たちは納得しない。選挙に勝ったからこそ、これまでよりも厳しい目で見られることになるんだよ。
テロ特措法の延長めぐり攻防
自民・民主の意見説明に注目
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――自民党は1955年にできたんだけど、56年から参議院のまとめ役である議長はずっと自民党出身の人だった。でも、今回初めて民主党出身の議長になったよ。
ケン これから国会ではどんな法律案が話し合われるの?
――一番大変になりそうなのは、自衛隊がインド洋でアメリカ軍の船などに給油する活動を続けるための法律(テロ特措法)改正だろう。アフガニスタンのテロ組織と戦うアメリカ軍を支援するというのが目的だ。でも今の法律は11月1日に期限が切れてしまう。そこで政府は1年延長する法律案を出す予定だけど、民主党は反対すると言っている。
日本が世界の中でどういう役割を果たしていくべきなのか、自衛隊をどう考えるかなど、自民党と民主党どっちの意見に説得力があるか、注目だね。
【きょうのポイント】
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▽7月の選挙の結果、参議院で1番議席を占めるのは野党の民主党になった。衆議院は、与党(自民党と公明党)で3分の2以上を占める。
▽法律案は普通、衆議院と参議院でそれぞれ過半数の賛成を得て成立する。これからは、衆議院で可決されても参議院で否決される可能性がある。
▽参議院で否決された法律案は、衆議院でもう1度3分の2以上の賛成を得れば成立する。しかし、1番最近の選挙結果を重視するため、すべての法律案に対してこの方法を取ることはないとみられる。 |
(2007年8月25日)
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