――大統領選は夏季オリンピック(五輪)と同じ年、つまり四年ごとに行われる。今回は11月4日が一般投票日で、そこで新大統領が決まり、来年1月20日に就任する。長くて厳しい選挙戦を勝ちぬかなければならないことから、マラソンによく例えられるんだよ。
ジャン どれくらいかかるの?
――大統領選のちょうど2年前に、連邦議会の上院と下院の議員を選ぶ中間選挙がある。これが終わると「だれが次の大統領選に出るのか」ということに関心が移り、ここから2年間におよぶ大統領選がスタートすることになる。
ケン 選挙のしくみも複雑らしいね。
――アメリカには共和党と民主党という二大政党があって、まず自分が所属する党の指名を受けることが大統領への道の第一歩となる。今年1月から全米50州と首都ワシントンなどで、党員集会や予備選挙が行われ、そこで勝った人を両党がそれぞれ大統領候補に指名した。
ポン だれが勝ったの?
――共和党はジョン・マケイン上院議員で、民主党がバラク・オバマ上院議員。どちらかが次の大統領になる。先日、共和党がアラスカ州のサラ・ペイリン知事、民主党がジョセフ・バイデン上院議員を副大統領候補に指名して、両党の正副大統領候補がようやく出そろった。
ケン これから投票日までは何があるの?
――実はここからが選挙戦の本番なんだ。大統領候補は3回、副大統領候補は1回、公開で討論会を行ったり、全米各地を演説してまわったりして、政策や人柄などを国民にうったえる。
ジャン それを見て、有権者がじっくり判断して投票するわけね。
――選挙に勝つのは「選挙人」を多く集めた候補なんだ。各州に割りふられた計538人の「選挙人」がいて、勝つためには過半数の270人以上を取ればいい。
ケン 有権者による一般投票は、選挙人の数にどう関係するの?
――多くの州では、一般投票で一位になった候補者が、その州の選挙人を総取りする方式になっている。だけど州によって選挙人の数がちがい、人口の多いカリフォルニア州では選挙人が55人もいる一方で、少ない州には3人しかいない。
ジャン じゃあ選挙人の多い州で勝てば有利だね。
――そうなんだ。もともと民主党支持者が多い州と共和党支持者が多い州があって、そういうところは弱い方がいくらアピールしても勝つのは難しい。そこで両党の支持者が同じぐらいいて、どちらが勝つか分からない接戦の州の勝敗がポイントになる。
ポン お金もたくさんかかりそうだね。
――アメリカは国土が広いからチャーター飛行機の費用もかかるし、テレビCMやスタッフの人件費もかかる。最終的には五億ドル(約540億円)の寄付を集めないと戦いぬけないといわれている。大統領の力は絶大で、核ミサイルを発射する権限を持ち、政策は世界経済に大きな影響を与えている。だから、大統領を選ぶのに時間とお金がかかるのは当たり前で、「これこそが民主主義だ」と考えるアメリカ人が多い。
ジャン 日本にとってマケインさんとオバマさんのどちらが勝った方がいいの?
――どちらとはかんたんに言えないけど、「アメリカがくしゃみをすれば、日本がかぜをひく」という言葉があるくらい関係は深い。アメリカ国内は景気が悪くなっているので、どちらが大統領になっても日本への影響は大きいだろうね。
|