●横浜で始まるAPECって

富貴 大輔記者(朝日小学生新聞編集部)

 ジャン APECが始まるからって、おまわりさんや警備の人をよく見かけるわ。
 富貴記者 横浜市で七日から十四日まで、APEC首脳会議などさまざまな会議が開かれる。この間、世界のいろいろな国・地域から首相や大統領らが集まるからね。ところでAPECが何だかはおぼえている?
 ケン アジア太平洋経済協力会議! この前朝小にのってた。
 ポン それで、どんな集まりなの?

 
アジア太平洋の国が自由な貿易を進める

人口・貿易額は世界の4割占める
「できる範囲で」をモットーに
今回は日本のTPP加入も注目

 
外務省の資料から イラスト・加藤篤弘

 ――APECには、太平洋のまわりにある二十一の国と地域が参加しているよ=イラスト。APECの「E」は「Economic(経済)」の頭文字をとっていて、おもに経済について話し合う。
 21の国と地域をすべて合わせると、人口が約27億人(世界人口の約40%)、貿易額は約1300兆円(世界全体の貿易額の約44%)。世界でもっとも大きい地域経済グループだ。


ケン 経済だから、貿易について話し合うのかな。


――APECがめざすのは、おたがいの国と地域との間でいろいろな物を売ったり、買ったりすることや、ほかの国や地域で会社が仕事をしやすくなったりすることだよ。
でも、APECはルールや数値目標でガチガチにしばるようなことはしないんだ。それぞれのメンバーで文化がちがうし、発展の度合いもちがう。APECは全員の同意でものごとが決まるから、細かく内容を定めようとすると、うまくいかない。みんなが納得できるスローガンをつくって、「できることをできる範囲で誠実にやる」という考え方だよ。


ジャン 国や地域同士の話し合いが、それでうまくいくのかしら?


――しばりがないことを、批判する意見はある。でも、過去にAPECが大きく役割を果たした例もあるんだ。
1996年、フィリピンで開かれたAPECで「コンピューターなどの情報技術(IT)製品が世界中でもっと広がるように、外国からコンピューターや部品を輸入するときに払う関税をなくそう」というメッセージを世界に向けて発信したんだ。このメッセージから、IT機器の関税をなくす情報技術協定(約七十か国が署名)ができ、外国のコンピューターも安く買えるようになったんだ。
こんなふうにAPECはスローガンをかかげる。その実現に向けて、国や地域同士が話し合って、約束事を細かく決める流れかな。
今度のAPECでは、日本がTPP(環太平洋パートナーシップ協定)の交渉に参加するかどうかが注目されている。政府は9日に方針を決める予定だ。TPPは「例外なく関税をなくす」などという約束事だから、国内でも推進派と慎重派にわかれている。


ケン 今度のAPECで、日本はどんな役割?


――首脳会議は毎年開かれているけど、今年は大きな節目の年なんだ。
94年にインドネシア・ボゴールで開かれた首脳会議で「ボゴール目標」をつくった。「先進国・地域は2010年まで、途上国・地域は20年までに『自由で開かれた貿易および投資』を達成」という内容だ。
節目である今年、目標がどれくらい達成できたか、議長である日本がリードして、報告書案をつくらなくてはならない。また、次の目標をどうするかの話し合いもある。責任は重大だよ。


ジャン APECって横浜以外でもあったわよね。


――今年は、横浜のほかにも札幌や仙台、京都など全国11か所で、各国・地域の大臣らが集まる会議などが開催されてきた。それらもふまえて、いよいよ首脳会議が横浜で始まるというわけだ。
21の国・地域のリーダーや大臣、その家族、報道関係者など、全部で約八千人が横浜を訪れる予定なんだ。同市は「横浜が世界の中心になる一週間」とアピールしているけど、まさにその通りだね。
中国の胡錦濤国家主席や、ロシアのメドベージェフ大統領もやってくる予定だよ。菅直人首相との話し合いがどうなるかなど、話題はもりだくさんだよ。

 

APEC日本で話し合うおもなテーマ
@ボゴール目標達成評価
 「自由で開かれた貿易および投資の達成」について、2010年までが期限とされたのは、日本・アメリカ・カナダ・オーストラリア・ニュージーランドの5か国。20年までが期限だが、評価を希望したシンガポールや韓国など8か国・地域とあわせて、どのくらい達成できたかを評価する
A地域経済を活発にする取り組み
 国や地域同士で結んだFTA(自由貿易協定)やTPP(環太平洋パートナーシップ協定)などを、より広い地域に拡大することをめざす
BAPEC成長戦略
 どんな将来像をめざし、それに向けてどんなスケジュールで行動するか
C人間の安全保障
 食料不足、新型インフルエンザなどの感染症、地震・津波などの災害、テロなどの課題に対して、どのような協力体制をとれるか

 

 

(2010年11月6日)

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