巨大地震の想定変わる

 

 

 

 南海トラフという静岡県から九州の沖合で、巨大な地震が起きて大津波が来るとの国の想定が話題になっています。首都圏でも大地震の予測が出されました。どんな地震が起き、どう備えればいいのでしょうか?

 

 

 

 

 

 なんで大きな地震が起きるの?
 南海トラフは、フィリピン海プレートという岩板が、陸側のユーラシアプレートの下に沈み込んでおり、海溝型地震と呼ばれる巨大地震が起きる場所なんだ。東海や東南海、南海地震が繰り返されてきた。

 

 今まで備えていなかったの?
 次は今世紀半ばまでに起きる恐れがあると考えられており、国は2003年に将来の地震の被害を予測して、それを減らす対策を進めていた。でも、東日本大震災でマグニチュード(M)9という日本での史上最大の地震が起き、前の予測より大きな地震が起きるかも知れない、と考えて想定を見直した。


 今度はどんな予測をしたの?
 東日本大震災と同じM9級の地震を想定。予測された主な点は、@10県153市町村という広い範囲で震度7の激しい揺れの恐れがあるA最大で34b、11都県90市町村で10b以上の大津波の恐れがあるB津波が来るまでの時間が短い――などだ。


 大変なことだね。
 ただ、注意しないといけないのは、最大を示した予測は、いろんな地震の起き方を考えた11通りの予測をして、最悪の部分を重ね合わせた予測だ。だから最大の揺れや津波が関東から九州まで同時に来るわけではない。


 こんな巨大地震はいつ来るの?
 わからない。過去に起きた記録はなく、将来、起きるかもわからない。各地での備えのために、現段階で考えられる最悪の場合の揺れや津波を示した予測なんだ。


 首都直下の地震で東京も震度7になるという予測もあったね。
 文部科学省の研究プロジェクトの成果として出された。従来の推定より地震が起きる場所が浅そうだとわかり、大きな揺れに見舞われる恐れがある地域が拡大した。
  これを受けて東京都は大地震に備えるため、首都直下の地震でどんな被害が出るかの想定をやり直した。


 どこが危ないの?
 東京23区のほとんどで震度6強以上の激しい揺れの恐れがある。だが、関東の地下は、複雑な構造をしており、M7級の地震は首都圏のどこでも起きる恐れがあるから、右の図で赤くなくても安心できない。それに、関東大震災のようなM8級の巨大地震も繰り返してきた。


 どう備えればいいの?
 地震の揺れで、倒れたタンスや壊れた家に押しつぶされないように家具の固定や建物の耐震化が必要だ。津波や火災から、どのように逃げればいいのかも確認しよう。日本は自然災害が多い国だから、地震だけでなく、大雨や洪水など身の回りの危険を知って「正しく恐れる」ことが必要だ。みんながきちんと備えていれば、たとえ家を失うことはあっても、命を守ることはできる。

 

南海トラフ

 トラフは海底の細長いくぼみで、日本語では舟状海盆。海溝より浅く、底が平たい。南海トラフは深さ4千〜5千bぐらい、東側は駿河トラフとも呼ばれる。英語でトラフは家畜用の細長いえさ入れや、天気予報に出てくる気圧の谷の意味もある。

海溝型地震

 地球の表面は、十数枚のプレートという岩の板が覆っている。海側のプレートが陸側のプレートに沈み込む場所では海溝やトラフができている。海側のプレートに陸側のプレートも引きずられて沈むが、元に戻ろうとする力が働いており、たまった力が限界に達すると元に戻り巨大な地震が起きる。

 

 

朝日新聞編集委員 黒沢大陸

 1963年生まれ。91年から朝日新聞記者。 東京社会部、科学部、科学医療部デスク などを経て編集委員。朝日新聞のウェブ サイト「アスパラクラブ」で災害や科学 技術を読み解くブログを連載中

 

 

2012年4月22日

 

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