予報困難な竜巻から身を守る

 


頑丈な建物に避難 窓から離れる

 

 北関東を中心に、5月に突風の被害が相次ぎ、茨城県つくば市では竜巻で中学生が亡くなりました。4月には「爆弾低気圧」と呼ばれる急速に発達する低気圧による被害もありました。竜巻や突風、雷から身を守るにはどうすればいいのでしょうか。

 

 

 

竜巻で破壊された住宅??5月6日、茨城県つくば市で©朝日新聞社

 

 

 

 

 何で竜巻が起きるの?
 積乱雲(入道雲)が原因だ。竜巻や落雷、局地的な激しい雨は、積乱雲下で起きる。特に、スーパーセルと呼ばれる巨大な積乱雲が危険だ。


 積乱雲は、どうやってできるの?
 強い上昇気流で、暖かく湿った空気がどんどんと上昇するとできる。5月6日の竜巻の時は、津軽海峡付近にあった低気圧に向かって地表近くでは南から関東に暖かく湿った空気が吹き込んでいた。一方、上空には寒気が入っており、地表近くの暖かく軽い空気が急上昇した。


 大雨や洪水のように警報はないのかな。
 竜巻の注意の呼びかけは複雑だ。半日から1日前に気象情報で注意が呼びかけられ、数時間前に雷注意報、1時間前以内に竜巻注意情報が発表される。


 雷注意報なのに竜巻に注意が必要なの?
 発達した積乱雲は、雷やひょう、竜巻の恐れがあるからセットで考えていたほうがいい。ダウンバーストという激しい下降気流もある。飛行機の大敵だよ。


 竜巻ってどれくらいの強さなの。
 つくば市の竜巻は「藤田スケール」という風の強さを示す6段階の指数で上から4番目だった。秒速50〜69bの風で「住宅の屋根がはぎ取られ、大木が倒れ、自動車が吹き飛ばされる」というレベルだ。風速を時速にすると180〜250`、新幹線並みの速さだ。場所によっては秒速110b前後に達したという推定もある。


 オズの魔法使いの竜巻みたいだ。
 米国中西部は広大な平地が広がっており、強力なトルネード(竜巻)が発生しやすい。平均して年間千個以上の竜巻が起きて54・6人が犠牲になっている。日本では年に十数個だ。


 日本は、5月に多いの?
 特に多い月は、9月と10月だけれど、一年中、いつでも起きる。海岸や平野部で多く見られるけれど、山間部でも起きており、日本中、どの季節でも起きる恐れがあると言える。昼間に多いが、夜でも起きる。


 竜巻注意情報が出たら用心だね。
 もちろんだが、竜巻の予測は非常に難しく、昨年は589回発表されて実際に竜巻や突風が発生したのは8回で「空振り」が多かった。「見逃し」も多く、竜巻や突風は39回起きているから、残る31回、80%が見逃しだった。雨が降るかどうかの的中率は85%を超えているから、天気予報とはだいぶ差がある。


 じゃあ、どうしたらいいの。
 気象庁は、積乱雲が近づく兆しとして、@真っ黒な雲が近づき、急に暗くなるA雷鳴が聞こえたり、稲光が見えたりするBヒヤッとした冷たい風が吹き出す――などの例を挙げている。身を守るには、頑丈な建物に避難して、窓のない部屋で丈夫な机の下に入る。屋外なら、ビルなどの物陰、水路やくぼみで身を小さくする。いつもとは違った不穏な天気には用心が大切だ。

 

 藤田スケール 「ミスター・トルネード」と呼ばれた米シカゴ大学教授だった故藤田哲也博士がつくった、竜巻の国際的な基準。F0〜F5の6段階で、最大のF5は「住家は跡形もなく吹き飛ばされ、車や列車などが持ち上げられて飛行、とんでもない所まで飛ばされる」というレベル。日本での最大はF3。
  スーパーセル 巨大な積乱雲。内部に数キロから10`程度の小さい低気圧(メソサイクロン)を持ち、普通の積乱雲が数十分の寿命であるのに対して、寿命が数時間にもなる。強い雨やひょう、竜巻、ダウンバーストなどの激しい現象を起こす。

 

 

朝日新聞編集委員 黒沢大陸

 1963年生まれ。91年から朝日新聞記者。 東京社会部、科学部、科学医療部デスク などを経て編集委員。朝日新聞のウェブ サイト「アスパラクラブ」で災害や科学 技術を読み解くブログを連載中。

 

 

2012年6月10日

 

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