朝日中高生新聞 日曜日発行 月ぎめ940円 タブロイド判(20〜24ページ・オールカラー) 朝日中高生新聞

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首相 衆議院解散 なぜ今選挙?

 

 

「経済政策、消費税率10%延期の是非問う」

 

安倍晋三首相が衆議院を解散すると表明しました。衆院選は12月2日に公示され、14日に投開票が行われます。衆議院選挙は一昨年の12月に行われたばかりで、任期4年の半分もたっていません。この時期に解散する首相の狙いはどこにあるのか、選挙戦の行方はどうなるのでしょうか。

 

 

 

 

 

任期途中で国民の判断仰ぐ

 

 そもそも衆議院の解散って、どういうこと?
 衆議院議員の任期は4年ある。だけど、首相は任期の途中で衆議院を解散することが憲法で認められている。
 何のために?
 ひとつは、首相と国会が対立して衆議院が内閣不信任を議決した時。この場合には首相は内閣総辞職をするか、衆院を解散しなければならない。もうひとつは、首相が国民生活にかかわるような大きな決断をした時だ。解散後の選挙を通じて、有権者にその是非を問う意味がある。
 安倍さんが今回衆議院を解散する理由は?
 消費税率を引き上げるかどうかの問題なんだ。ちょっと長くなるけど説明しよう。
民主党の野田佳彦さんが首相だった2012年6月、民主、自民、公明の3党が「社会保障と税の一体改革」を進めることで合意して、そのための法律をつくった。5%だった消費税率を今年4月に8%に、来年10月に10%に引き上げる。それで増える政府の税収を、子育て支援や年金に充てるという内容だ。この合意をへて、12年12月に行われた前回衆院選で自民党と公明党が勝利。自公連立の第2次安倍内閣が発足した。
 それで4月に消費税が8%になったわけね。
 その通り。ただ、それによって国民が以前よりモノやサービスを買うことを控えるようになって、景気が悪くなってきたんだ。そこで安倍さんは、予定通り来年10月に10%にしたらますます景気が悪くなると見て、増税を1年半延期すると決めた。その決断が正しいかどうかを有権者に判断してもらいたいというのが、安倍さんの説明だ。

 

より強い政権めざす目的?

 

 景気が悪化するなら、増税できなくても仕方ないような気がするけど。
 2年前につくった法律には、景気が悪くなったら増税は延期しても構わないという規定があるし、民主党も延期そのものは認めている。だから、わざわざ衆院を解散する必要はないだろうと野党は批判している。
 でも国民の意見を聞くのはいいことではないの?
 一般的にはその通りだよ。ただ、衆院解散には最初に説明した理由のほかに、与党の議席を増やすことで首相が政治的な力を強めようという狙いがあるんだ。
だから安倍さんに限らず一般的に首相は「今なら与党が勝てる」というタイミングを計って解散することが多い。
 それって自分の都合で解散するということ?
 政治には権力闘争の側面があるから、そうした計算をすることはある程度はやむを得ない。要は、そうした要素も含めて有権者がどう判断するかということなんだ。
 選挙の結果はどうなりそうなの?
 突然の選挙だから、現職議員が少なくて準備が整っていない野党には不利かも知れないね。安倍さんは、この2年間の経済政策と増税を1年半延期することの是非を有権者に判断してもらいたいと言っている。
ただ、安倍さんは歴代内閣が「憲法9条によって禁じられている」としてきた集団的自衛権の行使を認めたり、原子力発電所の再稼働を進めたりしようとしている。そうしたことも、有権者の判断材料になりそうだ。




朝日新聞論説委員 国分高史

1964年生まれ。89年から朝日新聞記者。 佐賀県、福岡県などで勤務し、95年か ら政治部で首相官邸や外務省などを担 当した。今は政府や国会の動きのほか、 憲法や安全保障の社説を執筆。

 

2014年11月23

 

 

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