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安倍首相 9月に内閣改造

 

 

顔ぶれを入れかえ、支持率アップねらう

 

 安倍晋三首相の夏休みも終わり、9月からは政治の世界も再び本格的に動き始めます。安倍政権には内政、外交ともにたくさんの課題が待っているのですが、首相がまず取り組むつもりなのが内閣改造と自民党の役員人事です。どんな狙いや効果があるのでしょうか。

 

2012年12月の発足以来、一人も交代していない第2次安倍内閣の大臣たち©朝日新聞社

 

大臣になるかどうか注目される石破茂幹事長©朝日新聞社

 

 

 

権力見せつけ求心力高める

 

 内閣改造って、要するに人事異動のこと?
 首相は代わらないけれど、大臣の顔ぶれを入れかえることを内閣改造というんだ。
 いまの内閣は、安倍さんが2度目に首相に選ばれてつくった内閣だから「第2次安倍内閣」と呼ばれる。改造が行われれば、2度目に選ばれた安倍さんが改造した内閣ということで「第2次安倍改造内閣」と呼ばれることになる。
 不祥事を起こしたり、病気になったりした大臣が交代しただけでは改造とは言わないけれど、いまの内閣は2012年12月の発足以来、大臣が1人も交代していない戦後最長記録を続けているんだ。
 それなのになぜ?
 内閣に限らず会社でも人事異動はあるよ。同じ人がずっと同じ役職についていると、新しい発想で仕事ができなくなってくる。そんなマンネリ化を防ぎ、新たな人材を登用するために役職を入れ替えるのはどの組織でも同じこと。
 だが、首相という大きな権力を持つ人が行う内閣改造やあわせて行われる自民党の役員人事には、それ以上の政治的な意味がある。
 どういうこと?
 首相は大臣を任命し、自由に辞めさせる権利をもっている。また、安倍さんは自民党総裁として主な党役員も決める。こうした人事権を行使することで自分の権力を見せつけ、求心力を高める狙いがある。国会議員になれば一度は大臣をやってみたいと思うのが政治家の心理だからね。
 それに顔ぶれをリフレッシュすることで、支持率が上がることも期待できる。
 いいことばかりみたい。
 そうばかりではないんだ。大臣の数は法律で決まっていて、いまは最大で18人。つまり大臣になりたくてもなれない人の方が多くなるから、そういう人たちは首相をうらみに思うかも知れない。それに大臣に起用してみたものの、不祥事を起こしたり、国会でうまく答弁できなかったりすると、「どうしてあんな人を大臣にしたんだ」と首相の任命責任が問われかねないんだ。


首相のライバルの行方が鍵

 

 次の改造の注目点は?
 自民党の石破茂幹事長を大臣にするかどうかだ。石破さんは前回の自民党総裁選で地方からは安倍さんを上回る支持を得た。来年9月の総裁選でも、安倍さんの強力なライバルになると見られている。
 幹事長は総裁に次ぐ党ナンバー2で、党の資金を握り、選挙を取り仕切る。石破氏が幹事長として来春の統一地方選でいい結果を残せば、地方から「石破氏を総裁に」という声が高まる可能性がある。安倍さんは石破さんを大臣にして、幹事長からは外したいようだね。
 内閣改造が終わったらどうなるの?
 課題はたくさんある。4月の消費税率引き上げが景気に与える影響をみながら、来年10月に10%への税率アップを予定通り実施するかどうかの判断を迫られる。秋の臨時国会では、集団的自衛権の行使を認めた7月の閣議決定について、厳しい論戦が予想される。
 外交面では、冷え切ったままの中国や韓国との関係改善、ロシアとの領土交渉などが課題だ。内閣改造でほっとしているヒマはなさそうだね。

 

朝日新聞論説委員 国分高史

1964年生まれ。89年から朝日新聞記者。 佐賀県、福岡県などで勤務し、95年か ら政治部で首相官邸や外務省などを担 当した。今は政府や国会の動きのほか、 憲法や安全保障の社説を執筆。

 

2014年8月31日

 

 

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