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朝日中学生ウイークリー

 

朝日新聞のコラム「天声人語」 書き写しノートが人気

 

学校で家庭で使い方いろいろ

 

 朝日新聞の1面のコラム「天声人語」を書き写す専用ノートが4月末に売り出され、すでに約40万冊が売れています。どのように活用されているのか、学校や家庭をたずね、人気の理由をさぐりました。




専用ノートを広げ、書き写す子どもたち=千葉県市川市の鶴指小学校で

 

お母さんと交代で天声人語を書き写している盛島くん(左)。親子のコミュニケーションを増やすきっかけにもなっています=大阪市住吉区で

 

 

良い文章に接することで学力アップ
 

 

 鶴指小学校(千葉県市川市)の朝の自習時間。「用意スタート」。ざわざわしていた6年1組の教室が、担任の高柳美紀子先生のかけ声で静かになりました。

 子どもたちは5月から使い始めた「天声人語書き写しノート」を広げ、15分間で天声人語を読み、書き写します。ノートには、1か月分の天声人語を貼り付ける欄と書き写すための原稿用紙、自由に使える余白があります。 

  タイムリーな話題や良質な文章にふれ、表現力や考える力を身につけることがねらい。最初は「この漢字習っていない」「文章がわからない」という声があがったそうですが、いまは時間内に書き終える子や感想を書く子もいます。

 原稿用紙は天声人語と同じ35行603字のマス目なので、一字でもまちがえるとぴったり終わらせることができません。時間が来ると途中でも手を止めます。坪田さんは「漢字や言い回しが難しいときもあるけど、読んだり書いたりしてわかるのがいい。文章を書くスピードがあがったみたい」と話します。
  高柳先生は「『復興』という言葉はテレビのニュースなどでよく耳にしますが、書き写すことで初めて漢字と意味を理解する子もいます。気づいたことをふだんの学習にも生かしてほしい」と話します。
 ノートは3月、朝日新聞教育事業センターが読者プレゼント用につくりましたが、反響が大きかったため4月末に売り出しました。
 9月に入ってからは学校からの注文が増えているそうです。センター長の坂本弘子さんは「調べた漢字や要約を書きこんだり日記がわりにしたり、さまざまな利用法があるようです」。
 

 東京の東急ハンズ池袋店(豊島区)は、文具売り場に専用コーナーを設けました。6月下旬には週30冊ほどの売れ行きでしたが、夏休み前に急増して最大で週700冊ほどに。マネジャーの芦田博彦さんは「手に取る人は就職活動をする大学生が多いですが、夏休みには小学生の親子連れも多かった」といいます。
 

家族で学べる

 

 大阪市住吉区の盛島くん(6年)は、お母さんの和美さんといっしょに5月から取り組んでいます。
 和美さんが季節の話題や盛島くんが大好きなサッカーなどをテーマにした天声人語を選んで、交代で書き写します。ノートは家族で団らんする場所にあり、いつでも見ることができます。「難しい漢字や言葉も出てきて、書き写すだけでも大変。でも続けることが大事なのでは」と秀人くん。
 和美さんは余白の部分に家族の会話なども書きとめています。「ノートを見返しながら、その日にあったできごとを親子で話せる機会が多くなればいいですね」と期待しています。
 

 長崎県諫早市の八並さん(5年)はほぼ毎日、小学3年生の妹と15分でどれだけ書けるか競争しています。「最初は半分もいかなかったけど、書ける量が増えるのがゲームみたい」と楽しんでいます。
 

 鹿児島県志布志市の保育園や学童保育所で朝日小学生新聞などの書き写しを学習に活用している横峯吉文さんは「新聞からは毎日の生活で欠かすことのできない言葉を自然と学べます。将来のことを考えたり、社会の動きについて家族と話し合ったりするきっかけにもなる」と話しています。

 

 

【天声人語】

 日々のニュースや季節のうつろいなどをテーマに603文字にした朝日新聞の看板コラム。1904年に大阪朝日新聞で始まりました。「天に声あり、人をして語らしむ」の意味で、市民の言葉に耳をすませて書くという思いがこめられています。

 天声人語書き写しノートは、朝日新聞販売所(ASA)で3冊630円(税込み)で販売中。問い合わせはフリーダイヤル0120・33・0843へ。東急ハンズなど一部の文具店や書店でも販売中。

 

 

 

2011年10月4日付

実際の紙面ではすべての漢字に読みがながついています。
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