情報を伝えるための手段(メディア)はたくさんあります。その中で「新聞」はどんな役割をはたしているのでしょうか。朝日新聞の記者をへて、週刊誌、テレビ、インターネットと、いくつものメディアでニュースを伝えてきた一色清さん(朝日新聞『WEBRONZA』編集長)に聞きました。
楽しく読んで
- Q
- 今年度から導入された小学校の新学習指導要領に「新聞活用」がうたわれています。
- A
- ぜひ、楽しく読んでほしいと思います。
ぼく自身、小3くらいから新聞を読み始めました。子どものころからスポーツが好きで、当時は相撲や野球に興味がありました。新聞は星取表(相撲の勝敗を示した表)や打率表が見たくて読んでいたのです。
新聞から結構、漢字を覚えました。意味はよくわからなくても、文脈からおしはかりました。何年か後に学校の授業で出てきて、「やっぱり『雪辱』は『リベンジ』って意味だったんだ!」とわかったときは、とてもうれしかったですね。
まずは見出しを見て興味のある記事から読むことをお勧めします。
小学生なら、そのニュースがとりあげられている理由を考える、同じニュースについて複数の新聞を読み比べて見出しのちがいを考える、といったことをするとおもしろいかもしれません。
本当かうそか自分で判断を
- Q
- 最近はインターネットのブログ、ツイッターなど情報発信の手段がふえてきました。
- A
- 個人でも情報発信ができるようになりました。これについては前向きにとらえていますが、まちがった情報がまことしやかに流れることもあります。
東日本大震災の直後も、ブログやツイッターなどでうその情報が流れましたね。
これからは、情報をうのみにせず、本当かうそか、自分で確認する姿勢を身につける必要があるでしょう。確認された情報を発信している新聞は、その判断をするときの助けになると思います。
- Q
- これから新聞はどう変わっていきますか?
- A
- ここ数年、文字を大きく、文章を短くして、記事を読みやすくする動きがあります。わかりやすい文章はニュースの内容をよく理解していないと書けません。記者にはよく理解してから書くことが求められています。
ウェブ上ではさまざまな情報発信の手段が出てきていますので、新聞にのせきれなかったところはウェブで流したり、動画と合わせて記事を紹介したりと、共存する方法を考えることも必要になってくるでしょう。
いっしき・きよし
1956年、愛媛県生まれ。東京大学法学部卒業。78年、朝日新聞社入社。福島支局、成田支局をへて東京本社経済部に。94年、週刊誌『AERA』編集部。2000~03年、同誌編集長。08~11年3月、ニュース番組「報道ステーション」(朝日・ABC系)のコメンテーターを務める。10年から朝日新聞社が運営する言論・解説サイト「WEBRONZA」編集長。
2011年10月18日付
実際の紙面ではすべての漢字に読みがながついています。