先生方へ 授業での活用方法

朝日新聞言論・解説サイト「WEBRONZA」編集長  一色清さんに聞く

新聞は他のメディアをリードする

情報の源に迫って正確に発信

情報を伝えるための手段(メディア)はたくさんあります。その中で「新聞」はどんな役割をはたしているのでしょうか。朝日新聞の記者をへて、週刊誌、テレビ、インターネットと、いくつものメディアでニュースを伝えてきた一色清さん(朝日新聞『WEBRONZA』編集長)に聞きました。

人に会い大勢で確認

「見せ方」などに力を注ぐ
テレビ、雑誌とは違う役割

(質問)
新聞はどのようなメディアですか?
(一色さんの答え)
ほかのメディアに比べて多くの記者がかかわっています。朝日新聞の場合、2000人以上の記者がいます。
 「記者クラブ」という場所を知っていますか? 省庁や地方自治体の役所、団体などからは毎日、さまざまな情報が出されるのですが、そこに新聞、テレビなど各社の記者が集まって仕事場を作り、取材しているところです。ここにいる記者も、テレビより新聞のほうが多いんですね。
 ぼくの経験からいって、最先端の情報というのは、やはり人と人との信頼関係で得られると思うんです。記者が足を運んで人に会い、じかに聞いた話を原稿にまとめ、複数の人が確認して、正確な情報を紙面にのせる。こうした作業をへた記事が、毎日たくさんのっています。
 一方、約1時間枠のテレビの報道番組で、1回の放送に流せるニュースは10本くらいでしょうか。テレビではむしろ、インパクトのある映像を流すといった見せるための工夫に力を注ぎます。雑誌なども似たところがありますね。新聞記者が書いた記事をもとに、とりあげ方で読ませようとすることも少なくありません。
 つまり、いまあるメディアの中では情報の源にたくさん接しているのが新聞記者といえます。信頼できる情報をたくさん発信しているという意味で、新聞は他のメディアをリードする存在と考えています。
一色清さん

楽しく読んで

今年度から導入された小学校の新学習指導要領に「新聞活用」がうたわれています。
ぜひ、楽しく読んでほしいと思います。
 ぼく自身、小3くらいから新聞を読み始めました。子どものころからスポーツが好きで、当時は相撲や野球に興味がありました。新聞は星取表(相撲の勝敗を示した表)や打率表が見たくて読んでいたのです。
  新聞から結構、漢字を覚えました。意味はよくわからなくても、文脈からおしはかりました。何年か後に学校の授業で出てきて、「やっぱり『雪辱』は『リベンジ』って意味だったんだ!」とわかったときは、とてもうれしかったですね。
 まずは見出しを見て興味のある記事から読むことをお勧めします。
 小学生なら、そのニュースがとりあげられている理由を考える、同じニュースについて複数の新聞を読み比べて見出しのちがいを考える、といったことをするとおもしろいかもしれません。

本当かうそか自分で判断を

最近はインターネットのブログ、ツイッターなど情報発信の手段がふえてきました。
個人でも情報発信ができるようになりました。これについては前向きにとらえていますが、まちがった情報がまことしやかに流れることもあります。
 東日本大震災の直後も、ブログやツイッターなどでうその情報が流れましたね。
 これからは、情報をうのみにせず、本当かうそか、自分で確認する姿勢を身につける必要があるでしょう。確認された情報を発信している新聞は、その判断をするときの助けになると思います。
これから新聞はどう変わっていきますか?
ここ数年、文字を大きく、文章を短くして、記事を読みやすくする動きがあります。わかりやすい文章はニュースの内容をよく理解していないと書けません。記者にはよく理解してから書くことが求められています。
  ウェブ上ではさまざまな情報発信の手段が出てきていますので、新聞にのせきれなかったところはウェブで流したり、動画と合わせて記事を紹介したりと、共存する方法を考えることも必要になってくるでしょう。

いっしき・きよし 
1956年、愛媛県生まれ。東京大学法学部卒業。78年、朝日新聞社入社。福島支局、成田支局をへて東京本社経済部に。94年、週刊誌『AERA』編集部。2000~03年、同誌編集長。08~11年3月、ニュース番組「報道ステーション」(朝日・ABC系)のコメンテーターを務める。10年から朝日新聞社が運営する言論・解説サイト「WEBRONZA」編集長。

2011年10月18日付
実際の紙面ではすべての漢字に読みがながついています。


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