ファンタジーは生きる力になるよ |
11月3日から連載『竜が呼んだ娘』 |
作者の柏葉幸子さんに
子ども書評委員が聞く
『霧のむこうのふしぎな町』などで知られる日本を代表するファンタジー作家の柏葉幸子さんが、11月3日から朝小で小説『竜が呼んだ娘』を連載します。作品にこめた思いや、住んでいる岩手県をおそった東日本大震災後に感じるファンタジー文学の力について、子ども書評委員が聞きました。
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インタビューに答える柏葉幸子さん=朝日学生新聞社で |
Q(子ども書評委員の質問) 『竜が呼んだ娘』はどんなお話ですか?
A(柏葉さんの答え)
竜や魔女がふつうに暮らしている世界で主人公の女の子が旅をして、どんどんたくましくなっていくお話です。私はこれまで、ふつうの生活をしている主人公が不思議な世界を旅して、また帰って来るファンタジーを多く書いてきました。でもこの作品は、最初から不思議な世界が舞台。どこの世界かわからないお話をもっと書きたいなあと思っていたんです。
Q 不思議なキャラクターがたくさん出そう。どうやって思いつくのですか?
A 家族や友だちを見て「この人おもしろいな」と思った人をピックアップして、特徴をお借りしています。この作品にかぎらず、いろんな人たちを「モンスター」などにして、お話に登場させています(笑い)。
Q さし絵は『魔女の宅急便 その3〜5』などを手がけた佐竹美保さんです。その魅力は?
A もう大好き! 私が書いた文章以上の描写をしてくれています。王宮の感じとか、独特の竜とか。この絵を毎日見られるなんて、幸せです。
Q 物語を書く上で大切にしたことは?
A 自分が楽しいな、楽しいなと思って書くこと。いつも「こうだったらおもしろいな」と思って書いています。読んでくれる子どもたちにも、「ああ、おもしろかった」といってもらえれば、それが一番なんです。
一瞬でもにこっと
Q お住まいの岩手県は、東日本大震災で被災しました。子どもたちを見て思うことは?
A 去年の6月末ごろ、岩手県沿岸部の小学校に取材で訪れました。先生に聞くと、子どもたちは講堂に集められるだけで、びくびくするというのです。震災の日、校庭に集められて、走って津波から逃げたそう。「集められると、こわいことが起きる」と思ってしまうんですね。
一瞬でもにこっとしたり、楽しいなと思えたりすると、また生きていこうという力が生まれる。本の読み聞かせなどを通じて、そういう力を少しでも与えられたらいいなあと思っています。
逃げることも必要また立ち上がれば
Q 小学生のころは、どんな子でしたか?
A 本が大好きな子。とくに『床下の小人たち』や『ホビットの冒険』などのファンタジーがお気に入りでしたね。
Q 改めて、ファンタジー文学の魅力は?
A ここで竜が出てくるんだとか、魔女が魔法を使うんだとか、それだけですごく楽しい。そう思えることが、魅力だと思っています。
ファンタジーは「逃避の文学」といって、きらう人もいます。現実から目をそらして、想像の世界に逃げる文学じゃないか、と。でも、逃げることも必要だと思います。
「いつもがんばるぞ」という生き方だけでなく、逃げなきゃいけないときは、逃げる。そしてまた立ち上がればいい。そのときの支えになるなら、それはファンタジーの力です。
かしわば・さちこ
1953年岩手県生まれ。盛岡市在住。『霧のむこうのふしぎな町』(講談社)で講談社児童文学新人賞など受賞。『つづきの図書館』(講談社)で小学館児童出版文化賞受賞。ほかに『バク夢姫のご学友』(偕成社)など著書多数。 |
『竜が呼んだ娘』のあらすじ
主人公は深い谷にある罪人の村に住む10歳の女の子、ミア。村では10歳になると、竜に呼ばれて外の世界へ出る子がいます。
「こんな自分は呼ばれはしない」と思っていたミアは竜に呼ばれ、魔女や竜騎兵のいる王宮へ行くことに。そこでミアはおそろしいものを目にして……。 |
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