第67回国連総会 18日に開会


 


193カ国が各1票持ち意思決定

 

 18日から67回目の国連総会が始まります。総会は193加盟国の代表が話し合う場で、国連で最も上に位置づけられます。しかし、世界の指導者が集まる初めの数日間しか、あまり注目されません。どんな機関で、何をするのか。ちょっと予習をしましょう。

 

国連総会を機に会談した野田首相と国連の潘基文事務総長=2011年9月、代表撮影

 

国連総会ではすべての国の代表が一般討論演説を行う=2009年9月、米ニューヨークの国連本部、代表撮影

 

 

 

 

 

 

  国連総会って、総理大臣が行く会議だよね?
  そんなイメージは確かにある。ただ、それは初めに2週間開かれる「一般討論演説」と呼ばれる部分なんだ。全加盟国の代表が演説する。自国の考えを世界に訴えるよい機会だから、大統領や首相、外務大臣が出席する国が多いんだよ。


  演説が2週間も!
  1カ国の持ち時間は15分だけど、193カ国もあるからね。時間など気にせず、熱弁をふるう代表もいる。
  ただ、会場が各国の代表団で埋まるのは、初日の2番目に演説する米大統領までかな。終わると大勢がぞろぞろと退場する。


  なぜ、アメリカが2番目なのかな。
  国連本部をニューヨークに招いてくれたことに感謝して、だよ。ちなみに最初に演説するのはブラジルなんだが、これがなぜか、よくわからない。


  それにしても、すぐに退席なんて不真面目だ。
  確かに。ただ、たくさんの指導者が集まるから、国同士の会談が500ほども行われるし、関連の会合も数百はある。大統領や首相は2〜3日の滞在中、30分刻みぐらいに予定が入るのが普通だ。こうした会場の外での外交が総会と同じぐらい大事なんだ。
  総会場も、注目の国や代表が演説する時はかなり埋まる。


  日本の演説も、関心は高い?
  まあまあ、かな。出番が初日じゃないから、注目度は落ちる。国家元首の国王や大統領が先で、政府の代表にすぎない首相はその後なんだ。それに、世界の将来を左右する大演説はしそうにないしね。


  「一般討論」が終わったら?
  それからが言ってみれば本物の総会で、世界の平和や安全にかかわることや、貧困、開発、教育、民主化など様々な問題を討議して決めていく。国連大使が出席するのが普通だね。いつも年末ぐらいで一段落するが、その後も議題があればいつでも召集される。


  決め方は?
  多数決。世界の平和と安全にかかわる重要な問題は3分の2以上、ほかは過半数の賛成で決まる。大きな国も、小さな国も、同じ1票を持つ。この考え方が、ぼくは大切だと思う。
  ただ、総会の決定は、強制力がないんだ。だから、総会を「ただのおしゃべりの場」と言う人もいる。


  今年の総会は、どこに注目すればいいかな?
  今年秋には、米国の大統領選挙があるし、中国でも新指導者が誕生する。ロシアやフランスは大統領が代わったばかり。そこで彼らが世界をどこへ導こうとしているのか。これが第一の関心だね。シリアの内戦も、事態が好転していなければ注目される。
  実は「一般討論」の前日に、「法の支配」をテーマに首脳会合がある。この問題は、シリアのような国でどう人々を守るか、紛争後にどう政府や軍を再建するかにも関わってくる。
  大切だけど退屈だから、たぶん、メディアはあまり報じない。でも、興味があれば国連のウェブサイトをのぞいてごらん。英語は少ししかわからなくても、世界の指導者が何をどう議論しているのか、雰囲気はわかると思う。

 

 国連の主要機関 国連には総会、安全保障理事会、経済社会理事会、信託統治理事会、国際司法裁判所、事務局の6つの主要機関がある。総会は1国1票を持ち、多数決で意思決定する。これらの組織はニューヨークの国連本部で活動しているが、国際司法裁判所だけはオランダのハーグにある。
 国連総会を機にした首脳会談 去年の国連総会に出席した野田佳彦首相は3日間の滞在中に、アメリカ、韓国、カナダ、インド、イギリス、EUの首脳、潘基文国連事務総長、国連総会議長らと会談した。外相同士の会談や外相が出席する会合も多数ある。

 

 

前朝日新聞編集委員 大妻女子大教授 五十嵐浩司

1952年生まれ。朝日新聞大阪社会部、 外報部を経てナイロビ支局長、ワシント ン特派員、ニューヨーク支局長を歴任。 大学や大学院でジャーナリズム論や国際 政治を教える。

 

2012年9月2日

 

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