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2017年6月22日付
親が働いていて、いっしょにごはんが食べられない、家の事情で十分な食事をとれない――。そんなとき、子どもが一人でも入れて栄養のある食事をとれる「子ども食堂」が、全国で広まっています。京都市伏見区に、子どもが自分たちで料理する子ども食堂があると知り、たずねました。(中塚慧)
「おなかすいたね」。5月の土曜日の午前10時すぎ、京都市伏見区の子ども食堂「MJキッズキッチン」に子どもたちが集まりました。商店街の空き店舗「京都文教マイタウン向島(MJ)」で、月に1回開かれます。
子ども食堂は、地域のボランティアが安い価格や無料で食事を出す民間の取り組み。MJキッズキッチンでは、子どもが出されたものを食べるだけでなく、自分たちで料理します。
参加費は無料。NPO法人からお金の援助を受け、食材の一部は、寄付された食品を必要なところに届ける「フードバンク京都」からもらいます。
この日は、小学2~6年の15人ほどと地域のボランティアや大学生が参加し、ハンバーグやマカロニサラダをつくりました。ある男の子はニンジンをスライスし、ある女の子はタマネギを切ります。料理を食べた子どもたちは「おいしい」と、ほおばっていました。
5年生の女の子は「お料理は楽しいし、ここに来れば、みんなとシール交換ができるのもうれしい」と笑います。
MJキッズキッチンは、京都文教大学専任講師の小林大祐さんが3年前の夏に始めました。きっかけは「夏休みで給食がないので、やせてきている子がいる」という民生委員の声です。
この地域は生活保護を受ける世帯や一人親の家庭が多いといいます。「親がお金を与え、子どもだけで食事をする家庭も。愛情が足りないのか、ボランティアの大学生にべったりあまえる子も多い。キッズキッチンが、子どもたちの居場所の一つになれば」と小林さん。料理することで、「ものをつくって喜ばれる経験」を積み、いつか手に職をつけるときに生かしてほしいとも願っています。
厚生労働省の2012年の発表によると、平均的な所得の半分を下回る額の世帯で暮らす子の割合「子どもの貧困率」は、6人に1人にあたる16.3%。子ども食堂は各地で増え、全国に数百か所あるとされます。
全国の子ども食堂をつなげる「こども食堂ネットワーク」には、北海道から沖縄まで240以上の食堂が参加しています。「お米が足りない」という食堂があれば、あまっているところから提供するなどします。事務局の釜池雄高さんは子どもたちに向け、「近くに子ども食堂があったら、足を運んでみて。『おせっかい』をしたがる地域の人がたくさんいますよ」と話します。
京都府は先月、京都精華大学と協力して「子どもの貧困」がテーマのまんが冊子をつくりました。タイトルは「もうひとつの居場所 こどもの未来のために」で、2万部を府内の小中学校や保健所などに配りました。
両親が離婚して生活に困る小学4年の女の子の変化に気づいた先生が、母子を助けるお話。女の子は、子どもが学校帰りに勉強をみてもらったり食事したりできる施設に行きます。施設は、京都府がすすめる「こどもの居場所」がモデルです。
府内でも、一人親家庭がこの10年で1.5倍に増えました。「子どもの貧困が身近な問題だと知るきっかけにしてほしい。大人たちが、地域の子どもを見守るようになれば」と府家庭支援課の野木孝洋さんはいいます。
記事の一部は朝日新聞社の提供です。