7月30日〜8月6日のニュース
朝日中学生ウイークリー
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高齢者の所在不明、全国で相次ぐ―地域社会が崩壊した「無縁社会」

 

 「長寿の国ニッポン」と、先週の朝中(8月1日号)1面で伝えたばかりだが、その「看板に偽りあり?」と思わせるような事実が明らかになった。全国で行方がわからないお年寄りが相次いでいるのだ。超高齢者が急増する中で人付き合いが希薄になり、頼ったり頼られたりした、かつての地域社会が崩壊しつつある「無縁社会」の現象なのだろうか。
 発端は、東京都足立区で、戸籍上は111歳で都内男性最高齢とされていた人が自宅で遺体で見つかったことだ。この男性は32年前に死亡したとみられている。その直後に杉並区でも、都内最高齢者とされる113歳の女性が、住民登録されている同区内のアパートに住んでいないことがわかった。
 こうした事態を受けて、全国の自治体がお年寄りの所在確認を進めたところ、6日午前1時までに、所在不明の100歳以上の人が全国で61人いることがわかった(朝日新聞社調べ)。神奈川や長野では、県内最高齢者の所在がわかっていない。
 長野市は、県内最高齢者の110歳の男性が30年以上、所在不明であると発表した。市によると、男性の住民登録がある場所に住んでいる息子は「30年以上前に伊豆(静岡県)に行った。何かがあれば先方から連絡が来る手はずになっている」と話したという。
 神奈川県内で最高齢とされる川崎市の109歳の男性は、住民票を残したまま同居の娘(74)と転居したとみられる。市職員は09年以降、男性と娘に接触できていない。
 東京都足立区や大阪府東大阪市では、所在不明の可能性がある人が計30人以上いることが判明しており、行方のわからない高齢者は今後も増えそうだ。
 厚生労働省は、全国で100人未満とみられる110歳以上の年金受給者に直接会って確認する方針だ。同省によると、09年9月現在、100歳以上は4万399人。
 こうした問題が全国で相次いでいるのは、人が死亡したと認定されるための手続きが関係しているとみられる。
 人が死んだら、同居の家族や家主などは、死亡を知った日から7日以内に死亡届を役所に提出する義務がある。しかし行方不明者については、相続する権利を持つ人などが、家庭裁判所に申し出るといった積極的な手続きをしなければ、死亡が認められず、戸籍上は生き続けることになる。
 このため市町村長には、明らかに死亡したとみられる高齢者については、死亡扱いにする権限もある。
 中央大学の佐々木信夫教授(地方自治論)は「一人で死んでいくお年寄りの問題もそうだが、核家族化や地域のコミュニティーの崩壊で、人との絆がなくなっていることの表れといえる。自治体は、個人のプライバシーの問題もあって立ち入った調査が難しい面もあるので、お年寄りに声かけするようなボランティアの組織をつくるなどの工夫が必要だろう」と指摘する。

 

住民が旗で安否確認―大分

 

 住民同士で、お年寄りの安否を確認できる仕組みをつくった地域もある。
記者の郷里、大分県国東市は、市内でも特に高齢者の多い武蔵町吉広地区で2008年12月から「黄色い旗運動」を始めた。朝、目が覚めると玄関先などに旗を掲げ、夕方にしまうというもの。昼に旗が出ていなければ、近隣の住民らが確認のために訪れるようにしている。
現在は市内6地域で同様の運動が行われている。運動を推進する市社会福祉協議会は「絆が薄れているのは都会だけの問題ではない。この運動が、人と人とをつなぐきっかけになれば」と話している。

 

 

日本の人口1億2705万7860人―3年ぶりに減少 31日

 総務省がまとめた、住民基本台帳に基づく2010年3月31日現在の日本の人口は1億2705万7860人で、前年より1万8323人少なかった。人口が減ったのは、07年以来3年ぶり。
 少子高齢化で、死亡者が114万6105人で過去最多となった一方、出生者は107万3081人で、2年続けて減ったのが理由。
 外国から来た人が、出ていった人より多くなる「社会増」は5万4701人で、去年に続いて5万人を超えた。不況で海外から撤退する企業が多かったためと、同省はみている。

 

「ビキニ環礁」世界遺産に―核兵器の悲惨さ伝える 31日

 太平洋のマーシャル諸島の「ビキニ環礁」が、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産(文化遺産)に登録されることが決まった。
 ビキニ環礁周辺では、米国が1946〜58年の間に計67回の核実験を行い、54年の水爆実験では、風下の島民や日本の第五福竜丸など近海で働いていた漁船の乗組員らも被爆した。
 広島の原爆ドームに続き、核兵器の悲惨さを伝える「負の遺産」としての登録になる。
 登録を決めたユネスコの世界遺産委員会は「ビキニ環礁はその歴史を通じて、人類が核の時代に入ったことを象徴している」としている。

 

クラスター爆弾禁止条約が発効 8月1日

 クラスター(集束)爆弾の製造や使用を禁じる「クラスター爆弾禁止条約」が発効(効力が発生すること)した。条約は、加盟国に対し、クラスター爆弾を原則8年以内に廃棄することや、被害者支援などを義務づけている。ただ、不発弾になる率が極めて低い新型爆弾は対象外とした=来週号で詳報。
 条約には、日本を含む38カ国が加盟し108カ国が署名(加盟の前の段階)しているが、世界中のクラスター爆弾の7〜9割を保有するとみられる米国、ロシア、中国、イスラエルは未加盟。

 

広島「原爆の日」、式典に米英仏が初出席 6日

 広島は65回目の「原爆の日」を迎えた。広島市中区の平和記念公園で「原爆死没者慰霊式並びに平和祈念式」(平和記念式典)が開かれた。
 式典には、国連から初めて潘基文事務総長が出席。米国とロシアが4月に新たな核軍縮条約に署名するなど、核軍縮・核不拡散の機運の盛り上がりを背景に、核保有国の米国、イギリス、フランスも大使館関係者らが初めて出席した。

 

7月30日〜8月6日のニュース

  30日△マンション内に幼い姉弟の遺体―育児放棄の母親(23)逮捕、約1カ月前に2人を置いて部屋を出る=大阪府警

  31日△ビキニ環礁、世界遺産に登録―核兵器の悲惨さ伝える「負の遺産」に
      △日本の人口、1億2705万7860人―3年ぶり減少

8月1日△クラスター爆弾禁止条約が発効―日本など38カ国加盟、108カ国署名
   2日△都内最高齢113歳、所在不明―全国で高齢の所在不明者相次ぐ
   5日△ロシア、今年末までの穀物輸出禁止を発表―干ばつ被害で
      △今年1〜6月の児童虐待、2000年以降で最多の181件―けが伴う虐待140件、性的虐待31件、育児放棄10件=警察庁

   6日△広島「原爆の日」―平和記念式典に国連事務総長、米英仏の大使らが初出席

 

 
 
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