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1970年の大阪の国際博覧会(万博)のことを知り、2025年に開かれる大阪・関西万博のことを考えよう――。1月27日、大阪府立大学教授の橋爪紳也さんを先生に「こども編集部」が開かれました。約50年前の万博が示した未来、そして次の万博が示す未来は、どのようなものでしょうか。
(文・中田美和子、写真・松村大行)
館内で流れる1970年の大阪万博の映像を見ながら、橋爪さんが説明をします。50年前のようすはみんなの目に「新鮮」に映ったようです=どれも1月27日、大阪府吹田市のEXPO’70パビリオン
こども編集部は、大阪府吹田市の万博記念公園にある「EXPO’70パビリオン」を会場に行いました。70年万博でパビリオンの一つだった建物です。今は橋爪さんの監修で、展示や映像で会期中のようすを伝える施設になっています。
「世界中のものが集まって、世界が見られる場所だった。そして、これからはやる技術やものが紹介されていた。10年後の世界はこんなふうになるんだ!とわかる場所でもあったのです」。橋爪さんは70年万博をこう説明します。
例えば建築の技術。アメリカのパビリオンは、内部の気圧を高くして形を保つテントのようなものでした。現在は東京ドームなどに使われています。工場で小さな部屋をつくっておいて会場では組み上げるだけにし、工事期間を短くする試みもありました。カプセルを取り付ければいくらでも部屋を増やしていける、という考えのタワーもつくられました。
当時はスマートフォンはもちろん携帯電話もありません。電話といえば固定電話でした。その中で電気通信館に携帯無線電話機が「夢の電話」として登場しました。日立グループ館では、飛行機の離陸と着陸の操縦を体験するゲームに長蛇の列ができました。今ではパソコンなどでもできるゲームです。
「人間洗濯機」の体を洗う技術は介護用に、電気自動車、動く歩道も万博から広がっていきました。ファストフードの日本初の実験店舗も万博会場内にできました。缶コーヒー、ヨーグルト、フランスパンなど、万博をきっかけに広まったものは数多くあります。
半年の会期中にのべ6421万人が訪れました。1851年に万博が始まって以来、入場者数としては当時1位で、2010年の中国・上海万博までぬかれませんでした。
大阪生まれ大阪育ちの橋爪さんは、万博のとき10歳、小学4年生でした。当時の写真に、思わず子ども記者たちから「わぁ」と声が上がります。自身の父親が会場の建設にかかわっていたこともあり、橋爪さんは何と18回も会場に足を運び、百以上あったパビリオンのほぼ全てを回ったそうです。
海外旅行が身近ではない時代、外国の人と接する機会はめったにありません。それぞれの国から来た、パビリオンの案内役のお兄さんやお姉さんにサインをもらいました。世界各国のめずらしい食べ物も魅力でした。各パビリオンでスタンプをおしてもらった「パスポート」を説明しながら、「世界を回ったような気分になった」と話します。
楽しい思い出と目新しい技術は、橋爪さんに大きな夢を残しました。「おやじががんばった場所だということや、いろいろびっくりすることがあって、万博をつくるような仕事がしたい!って思ったんです」
大学で建築史や街づくりなどを学び、博覧会などイベントの空間づくりを研究テーマにしました。2010年の上海万博では、大阪館の展示全体の企画をしました。25年の大阪・関西万博は、開催が決まる前から基本案づくりにたずさわっています。
25年の会場は大阪湾の人工島・夢洲です。「大阪湾は夕日がきれい。夕日の映る水辺を残した会場にします」。1970年の万博は世界から実際に人が来てイベントをしました。今度はネットワークでつながり、さまざまな情報交換ができるショーになるかもしれません。ドローンも飛び交っているかもしれません。
70年万博は会期中の迷子が4万8千人も出ました。入場時に保護者と子どもで同じ番号の札を持ち、照合して引き合わせをしました。実は橋爪さんも2度お世話になりました。次回は、顔認証でロボットが引き合わせてくれるようになるかもしれません。
「2025年、大阪はいいとこやと世界の人に注目してもらえる万博にしましょう」
世界の国々が集まる博覧会。時代を先取りする技術を見せたり、お国柄のわかる展示や催しをしたりします。最近では2005年に愛知県で「愛・地球博」が開かれました。
答えは本文中にもあるよ。探してみよう
Q1 入場者数はどれくらいだった?
①6400万人
②3300万人
③1200万人
Q2 迷子の数はどれくらいだった?
①3万2千人
②4万8千人
③5万6千人
Q3 会場に実際に展示されたものはどれ?
①人間洗濯機
②人間そうじ機
③人間カラオケ
Q4 万博をきっかけに広まったものは?
①即席めん
②缶コーヒー
③ガム
答えを表示 【答え】Q1① Q2② Q3① Q4②
70年万博に関する橋爪さんのコレクションも見せてもらいました。手にしているのは、大阪万博の「パスポート」です。回ったパビリオンでスタンプをおしてくれました
参加した子ども記者と橋爪さん