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札幌市立太平南小学校の5年生54名が授業に参加してくれました。
1時間目の講師は、日本ESD学会副会長の手島利夫先生。
手島先生は、縄文人が土器を使うことによって、硬い木の実や貝などを煮て食べ、食糧難を克服した事例を紹介しました。
「食べ物だけじゃないよね。私たち人間は、これまでにどんなことを克服して、生きてきたのでしょうか?考えてみましょう」
児童たちは真剣な表情で、ワークシートに書き込んでいきます。「寒さ」「のみ水」「病気」――。様々なキーワードが飛び出しました。
「何かを克服するっていうことは、今までより世界をより良くすることだよね」と手島先生。
「みなさんの住むこの世界が、この先もずっと豊かに続いていくために、必要なことは何でしょうか?」
克服しないといけない具体的な問題を考え、各児童が5枚ずつ、付箋紙に書きました。
教室には、「貧困をなくそう」、「海の豊かさを守ろう」など、色とりどりのマークが印刷された大型パネルが17枚並べてあります。これらは、国連で採択された「持続可能な開発目標」(SDGs)の目標です。
「これはね。ずーっと続く豊かな未来のために、国際連合で決めた17の目標です。いま書いてくれた問題は、どの目標に関係があるかな?」と手島先生。大型パネルに自分の付箋紙を貼りに行くよう、児童たちを促しました。
たくさんの付箋紙が、それぞれのパネルに貼られていきます。児童たちは、自分で考えて、お互いに相談し、そして、体を動かしながら、「SDGsとは何か」を学びました。
知らなかった海の酸性化問題
2時間目、ゲスト講師は国立研究開発法人 海洋研究開発機構 地球環境部門地球表層
システム研究センター センター長の原田尚美さん。
原田さんは海底にたまった泥や砂を解析する ことで、過去の地球の環境を調べる研究をされています。女性初の南極観測隊副隊長として、2017年11月から2019年の3月まで南極に行かれていた原田さんにみんな興味津々です。
「みなさんはお寿司が好きかな。何のネタが好きですか?」
原田さんの質問に児童からは「マグロ」、「エビ」、「ホタテ」――など元気な声が。
「おっ、エビとホタテって答えてくれたお友達がいるね。海の酸性化が進むと将来、エビやホタテが食べられなくなる可能性があるんだよ」
「えーっ、いやだー、何でー」と驚きの声があがります。
「大気中の二酸化酸素が海に溶けると、水と反応して水素イオンが発生し、海水は現在の弱アルカリ性から酸性側に近づいていきます。これを海洋酸性化といいます。
現在の北海道小樽の酸性度を示す指数pHは8 このまま対策を何もしないと今から約80年後にpHは7.7にまで低下してしまいます。
何だたった0.3減っただけじゃないと思うかもしれませんが、海の生物への被害は甚大です。海洋酸性化の影響を受ける生物として代表的なのは、サンゴですが、その影響が心配される生物はたくさんいます。貝や海老などは炭酸カルシウムの殻が作れなくなってしまいます」
酸性化だけでなく、さらに地球温暖化や乱獲が続くと、私たちが食べられるお寿司のネタがどんどん減っていくかもしれないのです。原田先生のお話にはみんなショックを受けたようです。
問題を解決するために必要な力
このように世界には知らなかった気づかなかった 問題がまだまだありそうです。
様々な問題を解決するためには、問題に気づく力、学ぶ力、何が大切か判断して実践する力
いろいろな人と協力のためのコミュニケーション能力などが大事になってきます。
今日の勉強をきっかけに、みなさんが海の環境のことや、SDGsという地球的な問題に興味や関心を深めてもらえたら、うれしいです。今日は一緒に考えてくれて、ありがとうございました。