朝日小学生新聞
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東京オリンピック・パラリンピック2020

東京五輪まで1年 今こそオリンピズム
(朝日小学生新聞2020年7月23日)



 新型コロナウイルスの影響を受け延期となった東京オリンピック(五輪)は、来年のきょう7月23日から開催の予定です。計画を見直しながら準備が進められています。延期して開催する場合の課題を専門家に聞きました。五輪メダリストは、選手に必要なのは、「集中できる環境」といいます。

 大会組織委員会は17日、新たな競技日程を発表しました。基本的に延期前の日程を曜日を合わせてそのまま引きつぎ、会場や競技数、種目の変更はありません。一方、国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長は日本時間18日、観客を減らすことも検討する考えを示しました。


人も費用も問題山積み 社会を変えるチャンスに

 来年、大会を開く上での課題は何でしょうか。オリンピック研究が専門の東京都立大学客員教授・舛本直文さん(69歳)は、大会に必要な「人」についての問題をあげます。
 選手だけで世界から1万人以上が参加する計画です。選手や関係者、観客の感染予防対策が必須です。約11万人を予定していたボランティアの集め直しや、3千人をこえる大会組織委員会の人件費、競技や宿泊用の施設が使えるかなどの問題があります。
 費用の問題もあります。1年延期で追加費用は数千億円ともいわれます。中止にしても、放映する権利のため巨額を出しているテレビ局や、スポンサーへの違約金がかかりそうです。
 一方で、今こそ何のために五輪を開催するのか考えてほしいと舛本さんはいいます。世界一を決める大会はほかにもある中で、「五輪は『オリンピズム』にもとづいて開かれる、平和の祭典です」。
 オリンピズムとは、「スポーツを通して体と心をきたえ、人種や国籍、言語、宗教などのちがいをこえて、平和な世界を築こう」という五輪を行う上で重要な、基礎になる考え方です。
 例えば、2016年のブラジル・リオデジャネイロ大会から難民選手団が結成されました。五輪を通して、難民でもスポーツをする権利があると発信しています。「五輪は社会を変えるチャンスでもある。新型コロナウイルスに負けず、貧困や差別もない平和な社会を目指すためにも、開催できればと思います」


元陸上選手で五輪メダリスト 朝原宣治さんの話
「平和ときずな 感じる大会に」

 選手たちは、五輪が開かれるときに力を発揮できるように、何年も前から準備をしています。1年延期されたことで、また積み上げていかなくてはなりません。精神的なダメージは大きいと思います。また、新型コロナウイルスの影響で練習が十分にできなかったり、試合が開かれなかったりしています。モチベーションを保つのは大変だと思います。
 しかし、気持ちを切りかえ、来年に向けがんばっている選手が多いです。集中できる環境を周りの人がつくるのが大切です。
 私は五輪に4回出場しています。100メートルなどで初めて五輪に出場したアトランタ大会(1996年・アメリカ)のときは「人生の中で特別な経験ができた」と感じました。北京大会(2008年・中国)では400メートルリレーで、自分にとって初めてのメダルとなる銀メダルを取ることができました。
 世界各国・地域の選手たちと、たくさんの応援を受けて競技をできる喜びを、東京大会で選手たちに味わってほしいです。子どもたちにも選手たちの「チームワーク」や「あきらめない姿」を感じてほしいです。
 東京大会で、私は兵庫県の聖火ランナーに選ばれていました。「平和と、人々のきずなを感じられる大会にしたい」という願いをこめて走りたいと考えていました。この願いは今も変わりません。


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