朝日小学生新聞
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【神戸タンタン物語 中】神戸に笑顔をありがとう

朝日小学生新聞 2020年1月9日付け

 兵庫県神戸市立王子動物園の入園者は、1999年度は90万人台でしたが、ジャイアントパンダが来園した2000年度以降は、年間で100万人以下になったことがありません。動物園は「パンダの影響が大きい」と説明します。タンタンファンの熱意が後押しし、来日20周年を記念した写真集の出版も決まりました。連載2回目はタンタンの人気の秘密にせまります。(猪野元健)

今年最初の開園日の2日から多くの人がタンタンを見に訪れました。
「元気をもらった」と多くの人が口にしました=兵庫県神戸市灘区の市立王子動物園

王子動物園 パンダ来園後、入園者年100万超
 2日、王子動物園でタンタンを見ていた大学生の鎌田彩那さん(20歳)は、「ゆっくりとのそのそ歩いて、やっぱりかわいいですね」とほほえみました。

 彩那さんは、阪神・淡路大震災後の復興のために来てくれたパンダに感謝している神戸市民の一人です。震災後の生まれですが、災害が人生に大きな影響をあたえました。

 1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災。神戸市で最も多い1470人が犠牲になった東灘区で、彩那さんの母親の幸枝さん(49歳)が被災しました。自宅1階がつぶれましたが、2階にいたため奇跡的に助かりました。

 幸枝さんは99年に次女の彩那さんを出産。その1年後、神戸にパンダがやってきました。「まだ復興の途中で、明るいニュースは少なかったのでうれしかったですね。子どもたちと何度も見に行きました」

 彩那さんは家族から震災のことを教わり、小学生のときに通っていた絵画教室でも命の大切さを学びました。東日本大震災(2011年)が起きると、絵画教室と交流のあった東北の被災地の子どもたちにはげましの絵を送りました。

 地震に強い建物を造りたいと、彩那さんは現在、大学で建築学を学びます。夢は建築家です。「神戸に笑顔を運んでくれたタンタンにはずっといてほしい」

「タンタンは生まれてからずっと身近な存在」と話す鎌田彩那さん=神戸市立王子動物園

ファンの熱意で写真集出版へ
 神戸を元気づけるためにやってきたタンタンに感謝の思いを伝えようと、神戸市の通販会社「フェリシモ」は去年9~12月、タンタンへのラブレターと写真を一般募集しました。タンタンはお客さんの方をあまり見ないことから、写真のテーマは「シャイなタンタン」にしました。

 1千枚をこえれば写真集にする企画で、最終的に3千枚以上集まりました。応募者は、大阪、兵庫、東京の順に多く、地元の兵庫以外からもたくさんラブレターと写真が届いたそうです。

 担当の関沙綾子さんは「ラブレターには、あたたかくて、おだやかなタンタンにいやされたという内容が多く見られました。一度見るとファンになってしまう魅力があるのでは」と話します。

 写真集はタンタンの来園20年になる今年7月に出版される予定です。


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