朝日小学生新聞
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【神戸タンタン物語 下】いつまでも神戸にいてね

朝日小学生新聞 2020年1月10日付け

 兵庫県神戸市立王子動物園のジャイアントパンダ「タンタン」は、今年7月にいなくなるかもしれません。「持ち主」である中国と約束した飼育期間が終わるためです。神戸市はパンダの飼育の延長を希望していますが、ライバルも続々と登場しています。連載の最後は、タンタンの未来についてです。(猪野元健)

えさの竹を食べるタンタン

王子動物園 7月に飼育終了?延長交渉中
 神戸市は7月以降もパンダの飼育ができるよう、中国と交渉をしていますが、副園長の花木久実子さんは「ぎりぎりまでどうなるかわからない」と話します。

 パンダの飼育には、特別な事情があります。動物園の動物の多くは、飼育する園の「持ち物」ですが、パンダは管理する中国から「借りる」立場です。絶滅の危機にあるため、ただ展示するだけでなく、保護の研究が目的です。

パンダ獲得にライバル続々
 日本には現在、3施設にパンダが計10頭いますが、神戸にはタンタン1頭しかいません。飼育を続けられないと、神戸からパンダはいなくなります。一方で、国内では「パンダを飼育したい」と手をあげる自治体が増えています。秋田市、宮城県仙台市、茨城県が力を入れています。

 パンダがくると街が盛り上がるという期待に加えて、秋田市なら中国の生息地の環境に近いことや、仙台市は東日本大震災の復興のためにと、それぞれ飼育をめざす理由があります。

国と国の関係が影響
 パンダの飼育にくわしい日本パンダ保護協会会長の土居利光さんも、「どこでパンダが飼育されることになるかまったくわからない」と言います。中国は飼育環境だけでなく、国と国との関係で有利になる飼育場所を候補地にするためです。新たに複数の動物園に貸し出されることは考えにくいとも指摘します。

 「仮に王子動物園でパンダを続けて飼育できることになったとしても、高齢のタンタンではなく、若いおすとめすのペアが貸し出される可能性もある。パンダの飼育は繁殖の研究目的だからです」

 王子動物園のパンダ舎でタンタンの未来についてお客さんに話を聞くと、「神戸にずっといてほしい」という思いは共通していました。一方で「東日本大震災の被災地の仙台市にパンダがいれば、東北の復興がもっと前に進む」「どんな結論でもいいから、一番幸せな環境に」と、神戸と同じように地震で傷ついた地域やタンタン自身の幸せを願う声も聞かれました。

 2000年に神戸にやってきたタンタンの名前の漢字「旦旦」には、「新しい世紀の幕開け」という思いがこめられました。阪神・淡路大震災の記憶はうすれ、タンタンはおばあさんパンダになりました。まもなく25年をむかえる震災に思いをよせ、多くの人に勇気をあたえてくれたタンタンに会いに行きませんか。

日本パンダ保護協会会長の土居利光さん


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