全国から集まったこども記者たちが、日本や自分たちの未来について話し合う「こども新聞サミット」が2017年4月3、4日、東京・お台場の日本科学未来館で開かれました。こども新聞やこども向け紙面のある新聞社29社が協力して開いた初めてのイベントです。科学技術、平和、共生など六つのテーマに沿って議論を深め、 未来に向けた提言を発表しました。
こども記者たちは、科学技術は人を幸せにするかを考えました。事前に、生物資源を有効活用するバイオマス発電所や、ふつうのコンピューターよりも桁ちがいに計算が速いスーパーコンピューターなど、新しい技術を取材したこども記者もいます。話し合いをもとに、技術が発達した「良い未来」と「悪い未来」を絵であらわしました。
悪い未来は、ロボットにたよりきりになった人間が何もできなくなる絵にしました。良い未来は、「科学」と「人間」がシーソーのようにつり合う絵で表現。「人間がロボットをきちっとコントロールすることが、良い未来につながる。作る人、使う人によって人が幸せになれるかが決まる」と結論づけました。
太平洋戦争中、地元であった空襲などについて調べたこども記者たち。1945 年8 月6 日、14 歳で広島の原爆の被害にあった田戸サヨ子さんに話を聞き、「平和をつなぐ新聞」という新聞を作成。名前には、「戦争は二度と起こしてはいけない」という田戸さんの気持ちをつなげたい、と思いをこめました。話し合いをもとに、次の平和宣言をまとめました。
1. 助け合いとゆずり合いの心を持つ
2. いじめなど、自分がされて嫌なことを人にしない
3. 差別をせず、自由に発言できるようにする
4. 人の良いところ、ちがいを認め仲良くする
5.「この国はダメ」と決めつけず、人間のことを考える
6. 戦争を体験したお年寄りの話を聞き、語りつぐ。
目の不自由な元競泳選手で、日本パラリンピアンズ協会会長の河合純一さんや、スウェーデンと香港からの留学生に話を聞きました。パラリンピックの金メダリストでもある河合さん。「障がい者や外国人が生活しやすい社会にするため、いろいろな人がまざり合う社会が必要」と話します。
河合さんや留学生たちと、会場の施設や近くの駅まで歩きました。目の不自由な人にとっては点字ブロックが道に続いていなくて不便なことや、飲食店のメニューに写真があることが外国人の手助けになることを学びました。
岩手県宮古市の仮設・復興住宅、兵庫県神戸市の神戸港、ラクダにも乗れる鳥取市の鳥取砂丘……。こども記者たちは、それぞれの地元が大好きです。まちの魅力をどう守っていくか、話し合いました。
「昔からのまち並みや自然を残してほしい」「お祭りなどがあれば、子どもからお年寄りまで一つになれる」といった意見があがりました。
元気で長生きするには、都会でも地方でも医療の充実が欠かせません。特に地方では、はなれたところでも診察ができる「遠隔医療」などの必要性があると学びました。
自分たちができることとして、「ほかの地域の人に、自分の地元の良さを伝え、交流する機会を大切にする」とまとめました。
こども記者の地元にもたらす地球温暖化の影響を調べました。岩手県花巻市のたろし滝では、氷柱の太さで米のとれ高をうらないますが、こおらない年が増えています。栃木県のイチゴ、静岡県のミカンの品質の低下など農作物にも影響があります。
WWF(世界自然保護基金)ジャパンの小西雅子さんから「再生可能エネルギーを増やす必要がある」と教わったこども記者たち。大人に向け、「戦争などで使うむだなエネルギーを減らし、あまった分を温暖化対策に有効活用してほしい」と伝えました。
東京都のマナー向上をめざす「Tokyo Good Manners Project」理事の古田秘馬さんと、身の回りの困ったことについて話し合ったこども記者たち。サミットで体験した「名刺交換」が、お互いを理解するために効果的だと知り、メッセージをこめた名刺を作りました。
名付けて「子どもマナーカード」。良いことをしたらスタンプがたまる「学校で使えるマナーカード」などです。「スマホより あなたの命 みつめよう」と五七五のリズムで、歩きスマホへの注意をうながすカードも考えました。良いマナーの社会にするため「大切なのは、思いを伝え合うこと」と発表しました。