全国28 の新聞社からこども記者の代表が集う「こども新聞サミット」が2018 年3月27 日、28 日に東京・ お台場の日本科学未来館で開かれました。環境や減災など六つのテーマに沿って、提言をまとめました。
こども記者5人は、それぞれの地元で動物と人の関わりや課題を取材し、発表し合いました。
北海道では、国立公園でヒグマが人に寄ってこないよう、来園者が守るルールを作っています。栃木県では、人が昔より狩りをしなくなったことや、里山が荒れたことが原因で、イノシシやシカによる田畑の被害が起きています。鳥取県では、駆除されたシカの皮や骨も工芸品などにして大切に利用しています。
秋田県北秋田市のマタギ(集団で狩りをする人たち)の鈴木英雄さんから、クマは昔は山奥まで行かないと見られなかったのに、今は人里まで来るようになったという話を聞きました。三菱商事の清松晴樹さんからサンゴ礁保全の話も聞きました。
自然と人間の問題を世の中に広く知らせるため、「クマの目線を体験できる仮想現実(VR)アプリを作ってクマの生態を知ってもらう」「大人にもっと出前授業をしてもらう」「子どもは知ったことを町内会などで発表する」といった発案をしました。
7人のこども記者は、「共生」というテーマについて、1998年長野パラリンピック金メダリストのマセソン美季さんも交え、真剣に討論しました。
「カナダでは、車いすの人がエレベーターに乗ろうとすると、みんなが降りてエレベーターに入れてくれます。日本では、車いすの私を見ないふりをして閉じるのボタンを押します」。マセソンさんの話から、日本は自分のことしか考えない人が多いのではと話が広がりました。「見えないだけでは」「障がい者は外に出ないから見えないの?」「関心がないから記憶に残らないのでは」とさまざまな意見が出ました
サミットの前に学習してきたことをそれぞれ発表しました。テーマは高齢者問題や世界の貧困にも及びます。発表を聞いて、子どもたちの考えも変化し成長していきました。
文化のちがいや障がいの有無など、ちがいがある人同士が共生するには「お互いがお互いを認め合うことが必要」と発表で伝えました。
AI(人工知能)の歴史や現状を学ぶため、6人のこども記者は、専門家に話を聞きました。
レゴブロックを活用したプログラミング教育を手がける「ロボット科学教育クレファス」の玉越理寛さんを講師に、AIの安全性について考えました。玉越さんは「AIへの不安もあるだろうが、人と仲良くなるようにAIとも仲良くなることが大切」と強調しました。
理化学研究所革新知能統合研究センターの中川裕志さんの話から、AIが今後どのような分野で広がっていくかを考えました。会場の外に出て、産業技術総合研究所臨海副都心センター(東京都江東区)も訪れ、AIが学習する仕組み「ディープラーニング(深層学習)」の説明を受け、AIが搭載された産業ロボットを見学しました。
こども記者は、AIが未来を変えていくと予想し、AIをさらに知ることが大切と呼びかけました。調べたことや意見をまとめた新聞の見出しは「AIなんて怖くない」と書きました。
話し合いでは最初に、こども記者6人がそれぞれ取材してきたことを発表しました。
2011 年の東日本大震災の被災者から聞いた話などから「災害が起きたらどうするか、日ごろから家族で話し合っておくことが大事」「自分の命は自分で守ると周りの人に伝えたい」などと訴えました。
地元の川で洪水が多い理由を調べたこども記者は「治水計画があっても絶対の安全はないと自覚することが、私にできる準備」と話しました。
東北大学災害科学国際研究所プロジェクト講師の保田真理さんは、地震が起きる仕組みを説明し「自然の恵みと災害は隣り合わせ。災害が起きたらどうするか、皆さんが考えて発信してほしい」と呼びかけました。
減災のため大切なことを話し合い、「災害のときに助け合える、近所づきあいを作ってほしい」「サミットのように全国の子どもが集い、減災を学べる場所を作ってほしい」と大人へ提言しました。
地元が誇る特産物や自然、偉人などの魅力をさらにアピールしていくにはどうしたらよいかを話し合いました。
こども記者7人はそれぞれの地元の魅力を取材し、具体的なデータを集めました。新聞にまとめたり、実物を見せたりして発表しました。
山形県出身のこども記者は、「将棋の駒の町」として知られる天童市の魅力を語りました。また山形県では、ふつうはじゃまものと見られている雪が観光資源になっており、雪どけ水が農作物をおいしくする効果もあると発表。大人の記者も熱心に耳をかたむけました。
その後、地元では有名でも全国では知られていない現状や、後継者不足や交通の便の悪さといった共通の課題を見つけ、解決の方法を話し合いました。
2 日目の発表会でそれぞれの地元の魅力をまとめた日本地図を披露し、「知名度が低い」といった課題に、「オリンピックの入賞者に特産物をおくる」などの解決法を提案しました。
「世界を一つの国として考え、先進国と発展途上国の人々が理解し合い、技術を提供し合うことが、温暖化を防ぐ近道です」
新聞にまとめ、みんながまざり合う社会のために「お互いに認め合い、わかり合う努力が大切」と呼びかけました。
こども記者9人が自己紹介をした後、冒険家の荻田泰永さんに、北極や南極を探検した話を聞きました。
荻田さんは、子どもたちの将来について、10年後はどんな仕事があるのかわからないとしたうえで、好奇心やチャレンジ精神、他人の長所を見つけられるなど普遍的な良さを身につけることで、変化の激しい時代にも対応できると呼びかけました。
その後はみんなで、あこがれの大人になるためにどうしたらよいか、話し合いました。「こんな大人にはなりたくない」「友だちはいたほうがいい?」「勉強はしたほうがいい? 役に立つ?」「結婚ってあこがれる?」「人はやっぱり見た目が大事?」などについて、それぞれが意見を述べ、他の人の話をしっかり聞きました。
発表会では、一人ひとりが将来の夢を宣言し、その実現に向けて大切にすべきことを「勉強」「コミュニケーション」「ふるまい」の3点から考えて発表しました。