与党が強くなり秘密法をつくった
国分高史記者 朝日新聞論説委員
ケン 2013年ももうすぐ終わるね。今年は政治でどんなことがあったかな。
国分記者 7月の参議院議員選挙で自民党が大勝し、衆議院と参議院で多数派が異なる「ねじれ」が3年ぶりに解消されたよ。10月には来年4月から消費税が8%に増税されることが決まったね。
ジャン 12月には「特定秘密保護法」が話題になったわ。
国分記者 今年の重大ニュースだね。政府の秘密を守るための法律で、この前の国会で成立したんだよ。いっしょにおさらいしよう。
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▲参院国家安全保障特別委員会で特定秘密保護法案が強行採決され、委員長(左手前から2人目)に抗議する野党の委員(中央)=12月5日、東京・永田町で©朝日新聞社 |
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特定秘密保護法案に抗議するデモ参加者たち=12月5日、東京・永田町で©朝日新聞社 |
ポン どんな法律?
――政府の大きな役割のひとつに、国民や領土を守ることがある。政府が持つ情報のうち、外に知られたら日本の安全が危うくなるような情報を特定秘密に指定する。もらした人には重い罰を科すことにしたんだ。
ケン 例えばどんな情報なの?
――安倍晋三首相は、情報衛星で撮った写真や暗号、兵器の性能などと説明している。それに外国の政府から教えてもらったスパイなどの情報も特定秘密になるだろうね。
ケン そういう秘密を守るのは当たり前のような気がするけど。
――そうだね。でも、この法律には大きな問題があるんだ。
ポン どういうこと?
――何を特定秘密にするかは、防衛省などの役所が決める。けれど、この法律では衛星写真などのほかに、幅広い情報を指定できるんだ。しかも、何が秘密に指定されたかはわからない。
ジャン 指定された秘密をチェックする人たちはいるの?
――外国では、国会や裁判所などにどんな情報が指定されているかチェックする権限を与えていることが多い。アメリカなどは一定期間たったら公開するように決めているけど、この法律だと秘密でなくなるまで最長で60年かかるし、60年以上秘密のままという例外も許されている。
ポン そうなると何が困るの?
――政府がまちがったことを決めたときの記録とか、国民に知られたくない情報まで秘密にしてしまうおそれがある。
ジャン 難しいわ。
――そうだね。でも、政府が何をやっているのかが国民にきちんと知らされないと、政府が正しいかどうか国民が判断できなくなる。そうなると、選挙で選んだ代表に政治を任せるという仕組みがうまくいかなくなってしまう。
ケン どうしてそんな法律ができたの。
――7月の参院選で自民と公明の与党が勝って、衆議院と参議院の両方で与党が多数派になった。両党が賛成すれば、基本的に法律は成立するようになったからだ。
特定秘密保護法には反対も多かったんだけど、与党は「それより秘密を守ることが大事だ」と反対する野党を押し切ったんだ。
ポン なんでもかんでも秘密になっちゃうなんてちょっとやな感じ。これからどうなるの?
――すぐに私たちの生活に影響が出ることはないよ。ただ、情報を独占できるとなれば、司法、立法、行政の三権のうち行政の力ばかりが強くなりかねない。それは日本の民主主義にとっていいことではない。
ジャン どうしたらいいのかしら。
――安倍首相や自民党の幹部は、政府の内部や国会に秘密をチェックする機関をつくるといっている。まずはこうした機関がきちんとできるかどうかをぼくたち国民が厳しく見ていく必要があるね。それと、特定秘密に限らず政府がもっている情報を公開するための法律を、国民がもっと使いやすくなるように改めることも大事だね。
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