辺野古の海へ、国が地元に同意要請
谷津憲郎記者 朝日新聞那覇総局
ジャン アメリカ(米)軍普天間飛行場という名前を、この前ニュースで見たわ。
谷津記者 政府は、沖縄県宜野湾市の街なかにある米軍普天間飛行場を、北へ40キロほどはなれた同県名護市辺野古の海沿いに移そうとしているんだ。そのために必要な埋め立て工事に同意を求める書類を、2月26日に出した。
ケン 誰に同意してもらおうとしたの?
谷津記者 地元の漁師さんたちでつくる組合だ。海を埋め立てれば、漁業ができなくなってしまうからね。
ポン 基地ごと引っ越しするってこと?
|
市街地にある米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市) |
|
普天間飛行場の移設先とされている沖縄県名護市辺野古沿岸部。美しい海として知られます。 どちらも©朝日新聞社 |
――そう、巨大な引っ越しだ。もし新しい基地が完成すれば、広さは約205ヘクタール。東京ディズニーランド4つ分もある。米軍キャンプ・シュワブという基地の一部も使うけれど、8割は海を埋め立てて造る。V字形に2本の滑走路を敷いて、米軍のヘリコプターや飛行機が1日に何十回も飛ぶことになる。
ポン それのどこがニュースなの?
――沖縄の多くの人は辺野古へ基地を造るのに反対しているからだよ。
辺野古の沖合は、人魚のモデルといわれるジュゴンも泳ぐきれいな海なんだ。それに沖縄は日本の0.6%の面積しかないのに、米軍基地の約74%が集まっている。宜野湾市の小学校では「米軍機が墜落した」という想定の避難訓練を毎年しているくらいだ。
「米軍基地が多すぎる。本土に比べて、いくらなんでも不公平だ」と沖縄の人たちはくり返しうったえていて、1月には沖縄の全市町村が「基地を移す場所は、沖縄県以外にして」と、まとまって東京へお願いに行った。
政府は、それを知っているのに今回の書類を出したんだ。沖縄の人たちがどんなに反対したって、計画はやりとげるぞということだね。
ジャン 人が嫌がることはしちゃいけないって大人はいうのに。どうして?
――辺野古に新しい基地を造る、という約束を米国と何度もしているからだろうね。
はじまりは1996年、17年前にさかのぼる。みんなが生まれる前だね。県内に新しい基地を造り、5〜7年以内に普天間は返す、と互いに約束した。後から場所が辺野古に決まったんだ。
その後、これまでに大きく2回、基地の「引っ越し先」を考え直す機会があった。一つはいまから10年ほど前、「米軍再編」といって、米国が世界中の米軍基地のあり方を見直したとき。もう一つは、2009年に民主党の鳩山由紀夫代表(同年、首相に就任)が「最低でも県外移設を」と選挙でいったとき。
でも、どちらも結局は辺野古にもどり、そのたびに「計画をきちんと実行します」と米国と確かめあった。日本は米国を頼りにしているから、「約束やぶりだ」といわれたくないんだ。
ケン それって、約束そのものに無理があるんじゃないのかなあ。
――沖縄の仲井真弘多知事も「17年もたって実行できない計画は現実的でない。あまり使われていない飛行場は本土にたくさんある。辺野古以外に場所を決めた方が早い」といっているよ。
ポン これからどうなるの?
――さっき沖縄の「多くの人」は反対している、といったでしょ。もちろん賛成する人もいる。名護市の漁師さんたちもそう。「埋め立て予定の海は、いまも米軍が訓練に使っていて、どっちにしても自由に漁ができない」と、埋め立てに同意する見込みだよ。
これを受けて、月内にも政府は仲井真知事に「埋め立てを認めてください」と手続きを進める可能性がある。でも、いまは名護市の稲嶺進市長も、仲井真知事も「県外移設」を求めている。埋め立てても環境が守られるのかなど、県は1年くらいかけて考えるつもりだ。
|