弁護士を身近にするため手探り続く
野村周記者 朝日新聞社会部
ケン 「司法試験が始まった」ってニュースで聞いたよ。司法試験って何?
野村記者 弁護士や裁判官、検察官という法律家になるための国家試験で、とっても難しいんだよ。
ジャン その司法試験が変わるとも聞いたけど。
野村記者 「司法制度改革」についてのニュースだね。試験そのものが変わるわけじゃないんだ。合格する人の目標を「1年に3千人」と決めていたんだけど、「ちょっと弁護士が増えすぎたから、目標は決めないほうがいいね」という話が出ている。
ケン 試験を受ける人は、どれくらいいるの?
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司法試験に合格し、喜び合う人たち=2012年9月11日、東京都千代田区で©朝日新聞社 |
――今年の受験者数は約7700人。例年それくらい受けて、合格するのは2千人ほど。4人に1人ぐらいの割合だね。7年前に仕組みが変わる前は、なんと100人に1人か2人だった。
ポン 7年前にも変えているの?
――このときは、根本的に仕組みを変えたんだ。もともと、弁護士や裁判官という職業は「ちょっと遠い存在」と多くの人が思っていた。暮らしのなかで、弁護士を利用することも少なかったからだ。
でも、社会の仕組みがいろいろと変わっていくと、ビジネスの世界や、普通の暮らしのなかでも弁護士を利用したほうがいいケースが増えてきた。そこで、弁護士がもっと身近な存在になるように数を増やそう、ということが決まったんだ。
ジャン どれぐらい増やすことにしたの?
――1990年ごろ、弁護士と裁判官、検察官の数は合わせて約1万5千人だった。これを2018年ごろには約5万人にしようとした。30年近くで3倍以上にする、というわけだ。このときに決めたのが「1年間の合格者を3千人に」という目標だ。
ケン さっき、根本的に仕組みを変えた、って言ったけど。
――合格者を増やすために、法科大学院という専門の学校を新たにつくったんだ。少ない人数で授業をして、法律の勉強をたくさんする。この学校でしっかり勉強した人にだけ司法試験を受ける資格を与える。ただし、試験を受けられる回数は5年間で3回だけ。
そのかわり、この学校を出た人は、7〜8割が司法試験に合格できるようにする。そんな仕組みだ。
また、いろいろな人が法律家になれるように、大学で法律以外の勉強をした人や、会社などで働いた経験のある人が、法科大学院に入りやすいようにした。
ケン 仕組みが変わって、合格する人が増えてよかったね。
――ところがそうでもない。いろいろな問題が出てきたんだ。
ポン どんなこと?
――仕組みづくりをしているときは、弁護士の数を増やせば、弁護士の仕事も増えると思っていた。でも、実際には、仕事はそんなに増えず、仕事が見つからない弁護士も出てきたんだ。すると、弁護士になりたいという人が減った。だからといって、誰でも司法試験に合格させていい、というわけにはいかない。
ジャン だから、合格者の目標を減らすことにしたのね。
――法科大学院もたくさんつくりすぎてしまったから、学生が集まらない学校が出てきた。また、合格者をたくさん出す学校と、そうでない学校にわかれるようになった。合格者が少ない学校には、国の補助金をなくそう、という話も出ているんだ。
弁護士として必要なレベルをちゃんと保ちながら、みんなの身近な存在にしていく。なかなか難しい取り組みだけど、国はいろいろと話し合いをしながら、これからも進めていくつもりだよ。
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