体に害、他人を死なせる事故も
津田六平記者 朝日新聞社会部
ケン 使った人が事故や事件を起こす危ない薬があるんだって。
津田記者 「危険ドラッグ」のことだね。使った人が運転する車に、歩いていた8人が次々とはねられる事故が6月に東京で起こった。それ以降、大きな問題になっているんだ。
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繁華街で見られた「ハーブ」と書かれた看板=北海道札幌市東京都が調べたところ、指定薬物がふくまれていることがわかった危険ドラッグどれも©朝日新聞社 |
ポン 何が危ないの。
――危険ドラッグは、乾かした葉っぱを細かくして、粉や液体の薬を混ぜたものだ。パイプにつめて火をつけ、けむりを吸いこんで使うことが多い。粉や液体のままのものもある。使うと、興奮して幻覚がみえたり、物事が正しくわからない状態を引き起こしたりするんだ。
ジャン ニュースで聞いたことがある「脱法ハーブ」とはちがうの。
――危険ドラッグは、とても種類が多い。そのため、すべてが法律で禁止されているとはいえない。確かに、これまでは法律に触れないという意味の「脱法ドラッグ」とか「脱法ハーブ」と呼ばれていた。けれど、こんなに危ないのに、使っても大丈夫だと勘ちがいする人がいることから、国が7月に呼び方を危険ドラッグに変えたんだ。
ポン 使わなきゃいいのに。
――いったん手を出すと、やめるのが難しい。危険ドラッグにくわしいお医者さんは「値段が安く、若い人も買いやすい。軽い気持ちで使い始め、楽しい気分になるからくり返してしまう」と言っている。一度でも使ったことがある人が、国内におよそ40万人もいるという調査もあるんだ。
ケン こわいな〜。体にも悪そうだし。
――全国の警察のまとめによると、危険ドラッグの使いすぎによって亡くなったと思われる人は、今年に入って24人もいた。暴れて様子が急変したり、ビルから飛び降りたりしている。
自分の体だけじゃない。使った直後に車を運転して、何の罪もない小学生や高校生がはねられて亡くなってしまう事故もあいついでいる。
ジャン そんな危ないドラッグ、簡単に手に入るものなの。
――それが、みんなの住む街のお店で堂々と売られているんだ。電話で注文を受け、約束した場所に届けてくれたり、インターネットで買えたりする店もある。自動販売機だってある。かくれて売ったり買ったりする覚せい剤や大麻とは大ちがいだ。
ケン 使った人や売った人を捕まえればいいのでは。
――危険ドラッグの中に麻薬の成分や体に害があると指定した成分が入っていれば、麻薬取締法や薬事法という法律で逮捕できる。でも警察などによる捜査には難しい部分もあるんだ。
ポン どういうこと?
――新しい製品が次々と出てくるんだ。国が体に害があるとして使ってはいけない成分の数を増やしている一方で、その成分をふくまない製品がどんどん作られている。害はあっても違法とはいえないものもあるんだ。また、覚せい剤などとちがって、違法な成分が入っているかどうかをすぐに確かめる検査方法がない。ちゃんと調べるのに1か月以上かかるため、使った人や売った人、作った人に逃げられるかもしれない。
ケン 危険ドラッグをなくすには、どうすればいいんだろう。
――国は、使ってはいけない成分をこれまでよりも早く追加していくなど、取りしまりの強化に乗り出した。みんなのような若い人たちに、どれだけ危ないものかを伝え、使わないように訴えていくことも大事だね。
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