フランス大統領選 5月6日に決選投票

 

 

 

 フランスで4月22日にあった5年に一度の大統領選挙。でも、当選者は決まりませんでした。現職のサルコジ大統領(57)も立候補していますが、ちょっと分が悪そうです。経済が不調だからと言われていますが、フランスだけの話ではないようです。

 

 

 

 

 

 

 

 どうして当選者が決まらなかったの?
 フランスの大統領選で1回で当選するには投票した人の過半数の票を集めなければならないんだけど、一番多かった野党の社会党のオランド候補(57)も半分には達しなかった。だから、2番目に票が多かったサルコジ大統領と2人で5月6日に決選投票をするんだ。

 

 どちらが強いの?
 やってみなければわからないけど、今はオランド氏が有利と言われている。実は、この2年、ヨーロッパの国の大きな選挙ではずっと、その時点で政府に参加していた与党やその政治家が負けているんだ。


 どうして?
 経済の調子がよくないからだ。2008年にリーマン・ブラザーズという米国の大きな投資銀行がつぶれて世界各地の銀行の経営がうまくいかなくなり、企業もものが売れなくなった。それで働いている人の給料が下がったり、仕事を失ったりした。ヨーロッパではその影響が大きかった上に、いくつかの国の借金が問題になったんだ。


 国の借金?
 国は政府で働く公務員を雇ったり、道路や橋などの設備を造ったり、国民の生活を支援するためにお金を使わなければならない。国民や企業から集める税金だけでは足りないから、国債という証書を発行していろんな人からお金を借りる。でも、ヨーロッパ各国では国の借金がたまりすぎて、投資家が「お金を貸しても戻ってこないかも」と疑い始めたんだ。
  国民の生活が苦しい時は国が支援しなければならないのに、借金を減らすため逆に税金を上げたり、生活支援を減らしたりしなければならなくなった。だから、どの国でも政府に不満を持つ国民が増えた。


 フランスも同じ?
 もっと厳しい状態の国はいっぱいあるけど、構図は共通だ。ヨーロッパの27カ国は欧州連合(EU)という集まりを作って助け合い、中でもフランスやドイツ、ギリシャ、イタリアなどの17カ国は「ユーロ」という同じ通貨を使っている。サルコジ大統領は各国そろって対策を取るため、ドイツのメルケル首相といっしょにまとめ役になってきた。
  だけど、自分の国では経済を活発化させるため企業の負担を減らそうとする一方、支出を減らすため国民の年金を減らしたり、税金を上げたりした。だから「企業ばかり優遇して国民を苦しめている」と多くの人が怒ったんだ。


 オランド氏が大統領なら、経済はよくなるの?
 「お金持ちからたくさん税金を取る」と言っているけど、ヨーロッパは国同士の結びつきが強いので、経済の問題はフランスだけでは解決できない。
  極端な意見を言う人も増えた。22日の投票では「外国のために自分たちが損をしている」とEUの国同士の協力を拒んだり、外国人の受け入れを制限しようと主張したりする候補にもたくさん票が入った。この候補たちは決選投票に参加できないが、彼らに投票した人が次に2人のどちらを支持するかが問題。不利になったサルコジ氏がこうした意見にすり寄るのではと心配する人もいるよ。

 

 フランスの政党 事実上、民衆運動連合と社会党の2大政党となっている。
  民衆運動連合は中道右派(穏健な保守派)で、2002年にシラク政権の与党として結党した。
  社会党は1969年に誕生。中道左派(穏健な社会民主主義派)で、81年にミッテラン大統領を送り出している。
  フランスの原発 1970年代の石油危機を機に原発の建設を加速したフランスでは現在、電力の8割を58基の原発でまかなっている。
  原発の現状維持を訴えるサルコジ氏に対して、オランド氏は依存度を5割に減らすことを提案している。

 

 

朝日新聞報道局 喜田 尚

 1961年生まれ。85年から朝日新聞記者。東京社会部、大阪社会部を経てモスクワ支局員やローマ支局長に。4月から機動特派員として、東京を拠点に世界各地で取材する。

 

 

2012年4月29日

 

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