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タカタ製エアバッグのリコール拡大

 

 

6年前には欠陥判明 対策「小出し」で批判

 

 自動車用安全部品メーカー、タカタ(本社・東京)のエアバッグのリコール(回収・無償修理)問題が拡大しています。衝突事故時にエアバッグの部品が飛び散り、少なくとも3人が亡くなりました。全世界で1300万台以上がリコールの対象になっています。

 

 

米議会下院の公聴会に臨むタカタや自動車メーカーの幹部ら=3日、米ワシントン

 

 

 

作動時に部品飛び死者複数

 

 タカタって聞いたことない会社だなあ。
 自動車のシートベルトやエアバッグを作る部品メーカーなんだ。スウェーデンのメーカーに次いで世界第2位、約2割のシェアを持っている。
 ホンダやトヨタ自動車、日産自動車など世界中の大手の自動車メーカーにそのエアバッグが使われている。ホンダやトヨタの車の中で使われている部品を作っている会社だから、一般的にはあまりなじみがないよね。
 不良品を作ってしまったんでしょう。
 そうだね。エアバッグというのは、衝突事故時に膨らんで、自動車に乗っている人が受ける衝撃を和らげ、命を守るものだよね。ところが、事故でこのエアバッグが作動したときに金属製の部品が飛び散り、中には金属部品が首を貫通して亡くなってしまった人がいる。タカタ側が把握しただけでも3人が亡くなっているけれど、米国では5人が亡くなったという報道もある。人の命を救うはずの装置で死なせてしまってはいけないよね。
 このため、タカタ製エアバッグを使う自動車メーカーが世界規模でリコールに踏み切った。その数は1千万台を超え、まだまだ増えそうだ。
 米国で問題になっているのをテレビのニュースで見たよ。米国の人はずいぶん怒っているね。
 米議会下院の小委員会が公聴会を開き、タカタの幹部を呼んで問いただした。実はタカタ製のエアバッグの欠陥は2008年にはわかり、それを搭載しているホンダが米国で4千台リコールした。その後、対象車種や地域を徐々に広げていったのだけれど、米国ではそのことが、対策を「小出し」にしている、と受け止められている。
 米国の高速道路交通安全局は全米にリコールを拡大するよう求めているんだけれど、タカタは「リコールは自動車メーカーがすること」「科学的な因果関係がつかめない」などと言って渋っている。それで余計、火に油を注ぐ結果になっている。
 おじさんはタカタの体質に原因があると思うな。

 

トップは現れず、対応遅い

 

 どういうことなのかな?
 タカタは自動車メーカーにエアバッグという部品を納入する部品メーカー。でもリコールをするのは納入相手の自動車メーカーなので、タカタは自分から進んで動こうとしたがらない。消費者というお客さんに直接、接している自動車メーカーと意識が違う。以前トヨタで同じようなことが起きたときには、豊田章男社長が自ら公聴会に出向いて改革を明言したけれど、タカタの実質的なトップの高田重久会長は姿を見せないで部下に任せている。
 タカタは高田一族の資産管理会社などが約6割の株を持っている。典型的な同族経営の会社なんだ。部品メーカーで同族経営。この二つの点が一連のリコール問題の騒ぎを大きくする原因じゃないかと、おじさんは思っているんだ。
 どういうことなの?
 対応が遅い。これだけ問題が大きくなったのに、この原稿を書いている12月11日時点でまだ記者会見は開かないし、高田会長は社会に向けて説明しない。タカタの広報担当者に電話すると、「会社側の声明はホームページにのせているので見てください」という対応だ。
 大騒動になったのに、権限が集中する創業一族はおろおろするばかりで対応を決めきれないんじゃないか、と思えるね。岐阜では廃車の解体中、リコール対象外の車に搭載されたタカタ製エアバッグが破裂し、フロントガラスが大破してもいる。早急に対策を講じないと「被害」が拡大するかもしれないね。




朝日新聞経済部 大鹿靖明

1965年生まれ。著書に講談社ノンフィクション賞を受賞した『メルトダウ ンドキュメント福島第一原発事故』 『ヒルズ黙示録検証・ライブドア』 『ジャーナリズムの現場から』など。

 

2014年12月14

 

 

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