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災害多発の夏…なぜ?どう備える?

 

 

自分の住む土地確認、避難は早めに

 

 広島の土砂災害で多くの人が亡くなりました。この夏は、沖縄や徳島、高知、京都、長野、北海道などでも大雨などの被害があり、東京ではひょうが降りました。災害が続いたのはなぜでしょう。自分の身にも降りかかる恐れがある危険に、どう備えればいいのでしょうか。

 

大雨で冠水し、逃げ遅れた車が放置 された住宅地??8月 17 日、京都府福 知山市©朝日新聞社

 

©朝日新聞社

 

 

 

崩れやすい地質に大雨

 

 広島は大変な災害になったね。
 大雨で土石流が81件、がけ崩れが38件発生して、72人が亡くなり、2人が行方不明となった(2日現在)。建物の全半壊は65棟だが、住宅地近くで土石流が発生して、人的な被害が大きくなった。
 なぜ、こんな災害が起きたの。
 日本列島を沿って延びる前線に向かって暖かく湿った空気が吹き込み、広島県内のアメダスで24時間で257ミリの猛烈な雨となった。例年なら日本付近は太平洋高気圧が覆って残暑が厳しい時期だが、今年は勢力が弱く、前線が居座った。
 広島は花崗岩が風化した「まさ土」という崩れやすい地質が広がっており、そこに大雨が降った。広島では1999年にも大雨による土砂災害で31人が亡くなる被害があった。99年と今年とでは災害が起きた場所は隣り合っているが、重なっていない。それぞれ大雨が降った場所で起きた。地盤が弱いところは大雨が降れば、常に災害が起きる危険があるということだ。
 大雨が多かったね。
 6月は低気圧の停滞による大雨で関東各地で24時間雨量が史上最大を観測。24日には東京の一部でひょうが降り、数十センチ積もった。7月には台風8号が沖縄を襲って特別警報が出され、長野県では男子中学生1人が土石流で亡くなった。
 8月にかけては台風11号と12号の接近や上陸。大雨が降った高知や徳島などで大きな被害があり、栃木県でも突風被害が相次いだ。
 8月中旬には局地的な豪雨で京都府福知山市で市街地の3分の1が冠水、北海道の礼文島では土砂崩れで2人が死亡した。
 異常な夏だったのかな。
 気象庁の検討会は、西日本を中心とした8月の豪雨などは「異常気象だった」との見解をまとめた。6〜8月の北日本や西日本太平洋側の降水量は特に多く、東日本や西日本の日本海側でも多かった。
 梅雨前線の停滞や太平洋高気圧の西日本付近への張り出しが弱かったことなどが影響した。短時間の豪雨も多く、北海道や高知、三重、広島など13道府県の34地点で24時間の降水量が観測史上1位を更新した。


危険な斜面も宅地開発

 

 大雨や土砂災害に、どう備えたらいいの。
 まず、自分の住んでいる場所でどんな災害が起きやすいのかを調べておくことだ。全国で約35万カ所の土砂災害警戒区域が指定されており、自治体が災害予測図を公表するなどで注意するよう呼びかけている。指定されていなくても、土砂災害危険箇所が約53万カ所あるので、自治体のホームページなどで確認しておく必要がある。
 宅地開発が進み、昔の人々が避けていた危険な斜面にも住宅が建っていることも頭に置いておくべきだ。
 大雨になりそうな時は、気象庁が出す情報に注意する必要がある。最も危険な「特別警報」が出されなくても「警報」や「土砂災害警戒情報」でも十分に危険な状態だから、早めの避難など身を守ることを考えなければいけない。避難所に行けないときは、家の2階や斜面から離れた部屋に移動する。土砂災害の前に、斜面の亀裂や落石、水の湧き出しや濁りなどの前兆もあるから注意が必要だ。
 広島で被害があったのは、長い年月で繰り返された土石流で流れてきた土砂が積もってできた「扇状地」だった。こうした場所は将来も土石流の恐れがある。地形のできかたのように学校で習った知識も、災害から身を守るのに役立つ。


朝日新聞編集委員 黒沢大陸

1963年生まれ。91年から朝日新聞記 者。科学医療部デスク兼編集委員。社 会部や科学部で、防災や科学技術行政、 環境、鉄道などを担当。著書に『「地震 予知」の幻想』(新潮社)。

 

2014年9月7日

 

 

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