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中韓との関係改善めざす安倍政権

 

 

戦後70年「安倍談話」国内外から注目

 

 2015年は、戦後70年の節目の年です。戦勝国も敗戦国も欧州連合(EU)のもとで統合が進むヨーロッパとは異なり、北東アジアではまだ歴史問題が尾を引いています。冷え切ったままの中国や韓国との関係を改善することができるか。これが今年の安倍政権の大きな課題です。

 

APEC首脳会議を前に習近平国家主席と握手を交わす安倍晋三首相=2014年11月、中国・北京、代表撮影

 

1995年、「村山談話」を発表する村山富市首相

 

2月にも再稼働すると見られる九州電力川内原発=鹿児島県薩摩川内市

 

 

 

 

歴代首相が節目の年に発表

 

 戦後70年に関係して、政治ではどんなことが予定されているの?
 安倍晋三首相は、「21世紀にふさわしい未来志向の談話を出したい」と言っている。
 どういう意味があるの?
 戦後50年の1995年の終戦記念日には、当時の村山富市首相が談話を発表した。「植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えました」と認め、「痛切な反省の意」と「心からのおわびの気持ち」を表明した。この率直な姿勢が、周辺諸国からも高く評価された。
 それが有名な「村山談話」なのね。
 そう。戦後60年の2005年には、当時の小泉純一郎首相も同じ趣旨の「小泉談話」を発表しているよ。
 今度は「安倍談話」というわけね。やっぱり同じような内容なのかな。
 わからない。ただ、安倍さんはかつて村山談話を「そのまま継承しているわけではない」とか「侵略の定義は定まっていない」などと発言して批判されたことがある。
 首相が言う「未来志向」が何を意味するのか不明確だけど、仮に村山談話が認めた植民地支配や侵略についてあいまいにするようだと、国内外から批判されるおそれもあるね。
 集団的自衛権に関係する法律をどうするかも注目されていると聞いたわ。
 安倍内閣は昨年、歴代内閣が「憲法9条で禁じられている」と解釈してきた集団的自衛権の行使を認める閣議決定をした。ただ、自衛隊が実際に集団的自衛権を使うには、そのための法律が必要なんだ。来年度予算が成立した後、国会で審議が始まる見通しだ。野党は昨年の閣議決定はおかしいと批判しているから、かなり激しい論戦になりそうだ。

 

今年は大きな選挙なさそう

 

 去年は12月に衆院選があったけど、今年は大きな選挙はないのかしら。
 今年また衆院が解散されて選挙になるとは考えにくい。4月には都道府県や市区町村の長と議員を選ぶ統一地方選がある。参院選は来年だ。ただ、今年は自民党と民主党の党首を決める党内の選挙があるよ。
 安倍さんが交代するかもしれないの?
 12月の衆院選で3分の2の与党勢力を得たばかりだから、9月に予定されている自民党総裁選では安倍さんが再選されるのはほぼ間違いないだろう。もしかしたら、対立候補すら出ないかもしれない。
 一方、衆院選で海江田万里代表が落選した民主党は、1月18日に代表選を行う。12月の選挙では目標だった100議席には届かず、73議席に終わった。民主党独自の力で再建するか野党再編を主導して勢力拡大を図るか、どちらの路線をとる代表を選ぶかが焦点になりそうだ。
 そのほかどんな政治の動きがありそうなの?
 鹿児島県の九州電力川内原発は2月にも再稼働する見通しだ。安倍政権がこのまま「原発回帰」を進めるのか議論になるだろう。また、首相が悲願である憲法改正への動きを進めていくのかも注目されるね。




朝日新聞論説委員 国分高史

1964年生まれ。89年から朝日新聞記者。 佐賀県、福岡県などで勤務し、95年か ら政治部で首相官邸や外務省などを担 当した。今は政府や国会の動きのほか、 憲法や安全保障の社説を執筆。

 

2015年1月1

 

 

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