- 毎日発行/8ページ
- 月ぎめ1,769円(税込み)
←2020年3月16日以前からクレジット決済で現在も購読中の方のログインはこちら
2018年11月24日付
ジャン パパから「原子力発電所(原発)の『廃炉』って知ってる?」と聞かれたけど、「廃炉」ってなに。
小川記者 運転を終えた原子炉を廃止することだよ。核燃料を取り出して放射能が減るのを待ち、原子炉や建屋を解体する。運転を終えてから数十年かかるとされる。東北電力が10月25日、東日本大震災から稼働を止めている女川原発1号機(宮城県女川町、同県石巻市)を廃炉にすると発表したんだ。
ジャン 女川原発?
――運転開始から35年目になる。福島第一原発事故の後、廃炉になることが決まった原発は20基目だ。福島の事故後、国内の原発はいったんすべて止まった。再び稼働するには1千億円をこえる安全対策のお金がかかるようになったため、古くて出力の小さい原発は廃炉が進んでいる。
ケン もっと教えて。
――女川1号機は、福島第一と同じ炉型で、1984年に運転を始めた。出力は52万4千キロワット。東北電力がほかに持つ女川2、3号機や東通原発(青森県)に比べて出力が小さい。
東北電力が廃炉を決めた最大の理由は経済性。たくさんのお金をかけて安全対策をしても、もうけが出ないおそれがあると判断したことだ。
福島第一原発は、地震による津波に襲われ、原子炉を冷やす電源を失ったことで、核燃料がとけ落ちる「メルトダウン」を起こした。その反省を受けてできた国の新規制基準は、地震や津波へのきびしい対策を義務づけた。対策には、防潮堤の建設などが必要になった。
また、原発を動かせる期間は原則として40年と定められ、延長が認められても最大で60年。古くて小さい原発が、お客さんに送れる電力量は少なくなる。大きなお金を投資して工事をしても、限られた期間しか運転できなければ、採算が取れないおそれが出てきた。
ジャン 国内の原発のいまの状況はどうなの。
――廃炉になることが決まった20基のうち、福島第一と福島第二の二つの原発の計10基は、地元の要請で廃炉の方針が決まった。別の10基のうちのほとんどは、出力が60万キロワットに満たない中型炉だった。
一方、60年までの運転延長が決まった原発は、福井県にある関西電力の高浜1、2号機と美浜3号機、茨城県にある日本原子力発電の東海第二の計4基で、いずれも出力が80万キロワット以上ある大型炉。出力のちがいによって、運転を続けるか、廃炉にするか、選別が進んでいる。
ポン 今後どうなる。
――原発は火力発電に比べて燃料費が安く、長い間運転することで、もうけを確保してきた。ただ福島第一原発の事故後は、日本だけでなく世界の国々が厳しい安全規制をするようになり、原発を運転するためのコストは大きく上がった。「もう原発はもうからない」と言う人もいる。
福島の事故が起きたとき、国内に54基の原発があったが、いま残るのは34基。政府は2030年度までに、すべての発電量にしめる原発の割合を「20~22%」にする目標を立てたが、達成には30基ぐらいの再稼働が必要になる。今後も廃炉になる原発は増える見通しで、政府の目標の実現は厳しくなっている。
記事の一部は朝日新聞社の提供です。