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2015年6月20日付
ジャン いまの国会で話し合っている法律案について、3人の憲法学者が「憲法違反」と言ったんだって?
渡辺記者 安倍晋三首相が今国会で成立をめざしている新しい安全保障関連法案についてだね。4日に開かれた衆議院の憲法審査会で、3人そろって「違憲」と表明したんだ。
ケン そもそも、憲法審査会って、何を話し合うところなの?
――憲法のいろいろな問題について国会議員たちが話し合うんだ。憲法を変えようという時には、憲法のどの部分を、どう変えるかを話し合う。衆議院は50人、参議院では45人の議員が所属しているよ。
ジャン 3人はなぜ、憲法違反だと言ったの?
――この日は、憲法によって、政治の力をおさえながら国民の権利を守ろうという「立憲主義」について、3人の学者からくわしい話を聞いたんだ。そこで民主党の議員が、「集団的自衛権」という考え方が入った安全保障関連法案について「憲法違反だと思うか」と聞いたんだ。
ケン どう答えたの?
――早稲田大学教授の長谷部恭男さんは「集団的自衛権の行使が許されるというのは憲法違反だ。従来の政府見解の基本的な論理の枠内では説明がつかない」と話した。
ポン むずかしい……。
――ごめんごめん。集団的自衛権とは、自分の国が攻撃されていなくても、関係の深い他の国が攻撃されたら一緒に反撃する権利のことをいうんだ。これまで政府は、いまの憲法では、日本が攻撃された時だけ反撃できるという考え方で、集団的自衛権は使えないとしてきた。
ジャン 去年、集団的自衛権を使えるように認めたと聞いたよ。
――そう。去年の7月、安倍首相は、日本の存在がおびやかされる危険が明らかにある場合などの条件をつけて、「使える」と憲法の読み方を変更した。この集団的自衛権の行使を認めることが、新しい安全保障関連法案の一番中心的な部分なんだ。長谷部さんは、その部分を、これまでの憲法の考え方と合っていないとして、憲法に違反していると述べたんだよ。
ポン 長谷部さんは、ほかには何と言ったの?
――「法的安定性を大きく揺るがす」とも発言した。つまり、内閣が交代するたびに憲法の読み方をころころ変えていたら、国民や政治家は何にしたがったらいいのかわからなくなるということだね。ほかに招かれた慶応大学名誉教授の小林節さんも「憲法9条に違反する」、早稲田大学教授の笹田栄司さんも「違憲の考えに立っている」としたよ。
ジャン 安全保障関連法案に影響はあるの?
――長谷部さんは安倍首相がトップを務める自民党の推薦で、憲法審査会で話をしたんだ。自民党が推薦した専門家が法案を憲法違反だと言ったので、野党などが「なぜ、安倍内閣や自民党は成立させようとしているのか」と批判しているよ。
ケン 議論は続いているの?
――11日の憲法審査会で、自民党の議員は「国民の命と平和を守る責任があるのは、憲法学者ではなく政治家だ」などと長谷部さんらに反論して法案は違憲ではないと発言した。15日には長谷部さんと小林さんが日本記者クラブで会見して、「自分に都合のよいことを言った参考人は『専門家』だとし、都合が悪いと侮蔑の言葉を投げつける」などとふたたび反論した。法案のとり下げを求め、議論が続いているよ。
衆議院憲法審査会に参考人として呼ばれた憲法学者。(左から)長谷部恭男氏、小林節氏、笹田栄司氏=4日、東京都千代田区
(C)朝日新聞社
国会前で安全保障関連法案に反対する人たち=14日、東京都千代田区、別府薫撮影
解説
渡辺哲哉記者
朝日新聞政治部
記事の一部は朝日新聞社の提供です。