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2015年8月29日付
ケン 中東の国・イランが、核兵器をつくろうとするのをやめたって?
神田記者 いや、イランはもともと、核兵器はつくっていないといっていたんだけど、そう疑われないようにもっと努力する、と約束したんだ。アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、ロシア、中国の6か国と話し合って、7月14日にまとまったよ。
ジャン 核兵器はつくってなかったの?
――よくわからない。イランは2002年、核兵器の燃料をつくるのに使える工場を、ほかの国に秘密で建てていたことがばれた。でもこれは、原子力発電の燃料をつくるためにも必要な工場で、イランはそう説明した。
ケン 6か国はどうしたの?
――核兵器をつくらないなら証拠を出して、と求めた。でもイランはきちんと答えなかった。それで6か国を中心に、世界中の国が制裁としてイランとの商売を少なくする、と国連で決めた。日本も参加したよ。
ポン じゃあイランはひとりぼっちだ。
――もともとイスラム教という中東で広く信じられている宗教を大事にする国で、考え方のあわないアメリカやイスラエルと仲が悪かったけど、ほかにもイランと付き合いをやめる国が増えた。
ジャン イランが核兵器をつくっていた証拠もないんでしょ?
――うん。でも、もしイランが核兵器を持ったら、まわりの国も自分を守るための核兵器を持とうとするかもしれない。ウチもウチもと広がったら、世界中の国が核兵器を持ってしまう。その前に止めなきゃね。
ポン それで、7月に何を決めたの?
――イランは、核兵器や発電の燃料になる「濃縮ウラン」という金属を1万2千キロ持っていたけど、300キロに減らすと約束した。工場の一部も閉め、機械を取り外す。そのかわり、イランとの付き合いは元にもどすことにしたんだ。
ケン よく話し合いがまとまったね。
――イランはほかの国と商売できず、お金がどんどんなくなった。意地を張っていられなくなったんだ。でも、イランは石油がたくさん出る国で、本当は付き合いたいと思っていた国は多い。それと、「イスラム国」(IS)って知ってるかな。罪のない日本人も殺害した悪い連中で、イラクやシリアなどイランに近い国で勢いを増している。力を合わせてふうじこめよう、という雰囲気が強まっていたんだ。
ジャン もう安心ね。
――そう簡単にはいえない。まずはイランが約束を守るか。ずっと敵だったアメリカと今さら仲良くできない、という人もいる。イラン政府は国連の取り調べを受け入れると約束したけど、軍の施設には入らせないといい出した。アメリカの方も、政府はOKといっているけど、国会議員にはイランとの仲直りをいやがる人がいるよ。
ケン 約束通りにいくのかな。
――守らなければ、約束を結ぶ前と同じにもどす決まり。イランもアメリカも、反対する人たちを政府が説得している。うまくいけば、来年初めには、イランと普通に商売できるようになる。日本でもガソリンの値段が安くなるかもね。
【人口】約7740万人
【面積】約164万8千平方キロメートル(日本の約4.4倍)
【首都】テヘラン
【言葉】ペルシャ語、トルコ語、クルド語など
【お金】イラン・リアル
解説
神田大介記者
朝日新聞テヘラン支局長
記事の一部は朝日新聞社の提供です。