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2015年10月31日付
ケン 最近、沖縄県と国がけんかしているの?
吉田記者 沖縄県にはアメリカ(米国)の軍隊の基地がたくさんあるんだ。その一つ、宜野湾市にある普天間飛行場という基地を同じ沖縄県内の名護市辺野古というところに移そうという計画がある。国は移したいけど、沖縄は反対しているんだ。
ポン どうして移すの?
――普天間飛行場の周りには人がいっぱい住んでいて、米軍の飛行機やヘリコプターが飛ぶ。住民たちは、「うるさい」とか「墜落しないか心配」と言っているよ。2004年にはすぐ隣の大学に米軍ヘリが落ちた。「世界一危険な飛行場」とも呼ばれているので、人が少ない場所に移すことにしたんだ。
ジャン なんで沖縄は反対なの?
――沖縄は日本全体の広さの0.6%しかないのに、日本にある米軍専用施設の74%が集まっている。米国の兵隊による事件や事故も問題になっている。多くの県民は「もう基地をつくらないで」と思っているんだ。去年の知事選挙では、辺野古に基地をつくることに「反対する」と約束した翁長雄志さんが選ばれた。
ケン それで?
――新しい基地は海を埋め立ててつくる。そのためには公有水面埋立法というルールに従って、知事から許可をもらわないといけない。辺野古の場合、翁長さんの前の知事だった仲井真弘多さんが13年12月に許可したんだけど、翁長さんが今月13日に取り消したんだ。
ジャン 一度許可したのに取り消せるの?
――翁長さんは、仲井真さんが許可した手続きを調べて、「本当は許可できない内容だった」と考えたんだ。例えば、辺野古の海にはジュゴンやめずらしいサンゴ、魚がすんでいるけど、これを守る対策が「不十分だ」と言っている。
普天間にいる米軍が沖縄からいなくなると日本が攻められやすくなるって国は言うけど、これにも翁長さんは「沖縄じゃなくても問題ない」って言ってるんだ。
ケン 国は怒らない?
――もちろん、だまっていないよ。許可は「正しい」と言い返している。埋立法を管理する国土交通省の石井啓一大臣は27日、基地をつくるための工事を続けられるよう決定した。29日には、これまで準備だけだった埋め立て工事も始めたよ。
ポン けんかしているみたい。終わるのかな?
――最終的には裁判所が両方から話を聞いて、どっちが正しいかを決めることになるね。
ジャン もし辺野古に移せなくなったら、世界一危険な飛行場はどうなるの?[
――安倍晋三首相は、危険な飛行場がいつまでも残ることを「絶対にあってはならない」とくり返し言っているよ。でも、そのためには「辺野古に移すしかない」とも言い続けている。
ポン じゃあ、どうしたらいいの?
――沖縄の外に移そうとしても、その地域の人たちがいやがるだろうね。実は日本が第2次世界大戦で負けた1945年の後、全国にはいくつも米軍基地がつくられていたんだ。でも、その多くが地域の人たちから移るように求められた。その行き先が沖縄。沖縄は戦後27年間、米軍に支配されていたから、文句を言えなかったんだ。
ケン 何のために米軍基地があるの?
――日本と米国は、日米安全保障条約という約束をしていて、米国は日本を守るために基地を置いているんだ。だから、翁長さんは「沖縄だけでなく、日本全体で米軍基地を負担するべきだ」と言っているんだ。日本全体の問題として、みんなで考えていく必要があるんだよ。
市街地の中にある米軍普天間飛行場=沖縄県宜野湾市
移設予定地の空撮写真と滑走路の建設予定図=沖縄県名護市辺野古
辺野古への基地移設に反対する人たち=28日、沖縄県名護市
解説
吉田拓史記者
朝日新聞那覇総局
記事の一部は朝日新聞社の提供です。