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2016年2月14日付
建設会社からもらったお金が原因
ジャン 先月、大臣が辞めたよね。
小寺記者 甘利明・経済再生担当大臣のことだね。大臣は石原伸晃さんが引きついだ。辞めたのは千葉県の建設会社からもらったお金が原因だよ。
ケン それって、どんなお金なの? そもそも政治家はお金をもらうと、なんでダメなの?
――順に説明するね。甘利さんは2013年に大臣室で現金50万円、14年に神奈川県の地元事務所で50万円を受け取った。甘利さんの秘書は13年に500万円を受け取り、300万円を自分で使っていたんだ。
この建設会社は、都市再生機構(UR)という会社とトラブルになっていて補償のお金をもらおうとしていた。担当者が秘書に口利きをたのみ、秘書がURと接触していたから、わたされたお金は仲介のお礼ではないかと疑われた。甘利さんは「政治家としてのけじめをつける」と大臣を辞めたんだ。
ケン 人に何かしてもらったら、お礼をすることもあるんじゃないの?
――政治家の力を使ってトラブルを解決してもらったり、一部の人だけが得をするために働いてもらったりするお礼として、政治家にお金をわたしてはいけないんだ。政治家は選挙でみんなに選ばれているのに、お金をわたしてこっそり何かをたのむことが許されたら、お金持ちだけが得をする政治になるかもしれない。だから、政治に関係するお金にはいろんな決まり事があるんだ。
ポン どんな決まりがあるの?
――「政治資金規正法」という法律では、政治家が1年間にいくらまで寄付としてもらえるか決めていて、だれにもらって何に使ったのか、毎年報告書で公開しなければならない。一部の人からお金をもらいすぎていないか、変なことにお金を使っていないか、後でみんなでチェックできるからね。お金をもらったのに、きちんと報告していなかったらルール違反だね。
ケン 他にはどんなルールがあるの?
――「あっせん利得処罰法」では、政治家や秘書がだれかからお願いされ、国や自治体で働く公務員にたのみ、そのお礼にお金を受け取ることを禁じている。たのむ相手は公務員以外にも、URなど国の影響が強い会社の人もいけない。政治家や秘書、お金をわたした人が罪に問われるよ。
建設省(今の国土交通省)の大臣だった国会議員が、ある建設会社から「国の建設工事の担当に選んでほしい」などとお願いされ、6千万円をもらった事件をきっかけに2000年にできたんだ。政治家がお金のために、えこひいきすることを禁止する法律だね。
ケン 例えば、どんなえこひいきがいけないの?
――大分県の市会議員が、消防職員の採用試験で受験生の親2人から計70万円もらい、受験生が試験に合格するよう試験の担当者に「なんとかたのむ」と電話していたことがあった。この議員には12年、1回目の裁判で有罪判決が出たんだ。
ジャン 甘利さんは、もらったお金と二つのルールの関係をどう説明しているの?
――秘書がもらったお金の一部が報告書に書かれていなかったことを認め、報告書を正しく書き直すそうだよ。甘利さんや秘書が、建設会社のトラブル解決のためにURに何かをたのんだかどうかについては、はっきり説明していない。甘利さんは、弁護士にたのんで建設会社と秘書の間にどんなやりとりがあったのか調べてもらっている。調べ終わった後、甘利さんがどんな説明をするか注目だね。
記者会見で経済再生担当大臣を辞めることを明らかにし、きびしい表情を見せる甘利明さん=1月28日、東京都千代田区
甘利さんにお金をわたした建設会社が、都市再生機構とトラブルになっていた土地=千葉県白井市
どちらも(C)朝日新聞社
解説
小寺陽一郎記者
朝日新聞社会部
記事の一部は朝日新聞社の提供です。