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2016年9月5日付
ジャン 国会や大きな駅の前で法案反対などをうったえてた大学生たちのかっこいいグループ、解散しちゃったってきいたよ。
佐藤記者 安全保障関連法や憲法改正に反対する運動を続けた学生団体「SEALDs」のことだね。8月15日に結成から1年あまりで解散した。
ポン 残念だね。
佐藤記者 でも、この間に政治について街頭でうったえる動きは各地に広がった。シールズが残したものは少なくないよ。
ケン シールズはどんな団体だったの?
――結成は去年5月3日の憲法記念日。政府の秘密情報の管理を強める特定秘密保護法に反対した学生団体「SASPL」のメンバーだった大学生らが中心となり、シールズを発足させた。
自衛隊の活動の幅を広げる安保法の審議が進んでいた去年夏、毎週金曜の夜に国会前でデモを実施した。リズミカルなかけ声、デザインにこだわったチラシやプラカード、SNSを駆使した情報発信。メンバーたちは「自分たちが参加したい」と思えるデモの実現をめざしていた。
ポン 楽しそうな様子をテレビで見たよ。
――反対運動は盛り上がりを見せた。シールズをふくむさまざまな団体が参加した去年8月30日の国会周辺デモには、約12万人(主催者発表)が参加。でも、同9月19日に安保法は成立した。
ケン その後、シールズはどうしたの?
――今年の夏の参院選で、野党に一緒に闘おうと呼びかけた。安保法の廃止を求め、憲法改正への意欲も見せる安倍政権に対抗するためだった。
民進党や共産党など野党4党が、一つの選挙区で候補者を1人にしぼる一本化を実現。メンバーは候補の応援演説で全国各地を回り、投票を呼びかけた。でも選挙の結果、改憲に前向きな勢力が国会の議席の3分の2を占めることになり、改憲の手続きの第1段階を進められる条件が整った。
ケン シールズの主張が広がらなかった?
――そういう見方もある。安倍晋三首相を呼び捨てにして批判する手法などに「拒否反応を示した人がいるのでは」との指摘もあった。
一方、シールズによる新しいスタイルのデモは政治参加のハードルを下げた、と評価する声は多い。これまでとちがい、おしゃれさにも配慮したデモは幅広い世代の参加者を集めた。
ポン ぼくもかっこいいと思ったよ。
――シールズを参考に、各地で若者が新しい団体を立ち上げ、デモや集会を開く動きも広がった。シールズメンバーで大学院生の諏訪原健さん(23歳)は「声を上げるというプラットフォーム(基盤)ができた」と振り返る。
ジャン もっと続ければいいのに。
――最初から活動期間は今年の夏の参院選までと決めていた。メンバーは今後、進学したり就職したりする。それぞれの日常生活の中で政治に関わったり、情報を発信したりしていくという。
メンバーの大学院生、奥田愛基さん(24歳)は、出版した著書で活動を振り返り、こう書いた。「きっとまたSEALDsのようなものが立ち上がる。その中心を担うのは僕たちの次の世代かもしれない」
安保法成立から1か月の節目に合わせ、SEALDsなどが主催した東京・渋谷でのデモ=昨年10月
(C)朝日新聞社
解説
佐藤恵子記者
朝日新聞社会部
記事の一部は朝日新聞社の提供です。