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2018年9月9日付
日がのぼる時間が早い夏に時計を数時間早める「サマータイム」の制度を日本で取り入れるかどうか、議論になっています。取り入れるにはさまざまな課題があるようです。取り入れている国に住む朝小リポーターに、その時期の過ごし方を聞きました。(松村大行、岩本尚子)
サマータイムは1916年にドイツで始まりました。今はヨーロッパの国々やアメリカなどで毎年行われています。照明などに費やす燃料の節約や、夕方から夜の時間を有効に使うことなどがねらいです。
日本でも第2次世界大戦後に統治していた連合国軍総司令部(GHQ)の指導により、48年から4年間だけ行われました。その後、復活させる案が何度も出ては消えました。今回は2020年の東京オリンピック(五輪)・パラリンピックの暑さ対策として、6~8月に時計を最大で2時間早める案が出ています。
一方、行っている国々では廃止を求める声が高まっています。ヨーロッパ連合(EU)ではこの夏、域内28か国の市民から意見を集めたところ、廃止を支持する人が84%に上りました。大きな理由は健康への悪影響。睡眠不足になり、交通事故が増えるといったデータが出ています。
新たに始めるうえでこまるのは、広く使われているコンピューター機器の時計です。機器には時刻を合わせるソフトが組みこまれています。インターネットを通じて自動で修正できるものもありますが、サマータイムによる急な時刻のずれに対応できるかどうかは別問題。対応できないものは修正や交換が必要です。
機器の問題にくわしい立命館大学教授の上原哲太郎さんは「準備期間が2年では無理。せめて4年はほしい」と話します。
アメリカとオランダに住む朝小リポーターに、サマータイムの過ごし方を聞きました。どちらの地域も3月の日曜日から半年以上、時計が1時間早まります。
アメリカ・ニューヨーク州アンハッチンソン小の3年生は「初めて経験した時は少しつらかった」とふり返ります。始まる1週間前から早く起きて体をならします。「それでも眠かったり、夜いつもより元気だったりします」
先生からは登校時間をまちがえないよう注意があり、市販のカレンダーにはサマータイムの始まりと終わりの日が印刷されているそうです。
オランダのザ・ブリティッシュ・スクール・オブ・アムステルダムの6年生は「日曜の午前中にサッカーがあるので、サマータイムが始まる日は時間をまちがえないよう気をつけます」。日本との時差が減るので、日本とやりとりする両親は、会議の時間などでまちがいがおこりやすいといいます。
オランダは緯度が高く、夏は明るい時間が長くなります。サマータイム中の「明るい夜」に、吉山さんは本に夢中で寝る時刻に気づかなかったり明るすぎて寝られなかったりします。でも「晩ごはんを食べた後でも近所の友だちと外で遊べるのはうれしいです」。
記事の一部は朝日新聞社の提供です。