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2019年6月17日付
食べ物をむだにしないように一人ひとりができることをしよう、という法律が先月つくられました。その「できること」を学べるカードゲームがあります。「食べ残しNOゲーム」です。栗田哲さん(大阪・四條畷学園中学3年)が、小学6年生のときに考えました。遊んだ人が、食べ残しをしないことを広げてくれればと願っています。(中田美和子)
「食べ残しNOゲーム」は、パン屋やすし屋などの食べ物屋さんにふんして遊ぶゲームです。食べられる量と使える金額が示された「お客さまカード」、料理の量と値段を示す「メニューカード」を主に使います。
プレーヤーは、食べられる量にぴったり合ったメニューを出せば、売り上げにボーナスが付きます。量が多かったり足りなかったりすると、売り上げから罰金が引かれます。食中毒発生、アレルギーといった食べ残しの原因になるカードもまじえてプレーします。最終的に売り上げが多い人が勝ちです。
栗田さんは小学6年生のときお父さんに勧められて、ディープピープル(大阪市西区)というNPO法人が運営する講座を受けました。社会や自分の課題を見つけて、先生と話し合いながら解決法を考えます。週1回、3か月通いました。
食品ロス(食品のむだ)をテーマにしたのは、お父さんが経営するうどん屋さんやとんかつ屋さんの食べ残しが気になっていたからです。ゲームにすることは「パッと思いついた」。遊びながら学べるし、カードゲームが好きだったからといいます。以前に挑戦した社員教育用の経営ゲームの知識も生きました。
元になるカードは1週間でかき上げましたが、試してもらうと「複雑すぎる。時間がかかりすぎる」。改良を重ねました。商品化のため、他の受講生に説明したり、飲食店にチラシを置いたりして資金を募りました。イラストやデザインは専門家にたのみ、去年の秋に完成しました。
栗田さんは「ゲームをした人が『食べ残しはだめ』ということを他の人にも広めていってほしい」といいます。自分でも、おにぎりなどを買うときは消費期限が近いものから手に取る、食べられる量を考えて注文するなど、気をつけています。
甲南女子大学(兵庫県神戸市)で5月30日、大学生がゲームを体験しました。市民活動について学ぶ授業です。「日本の食品ロスは年間646万トン(2015年度)。全国民が毎日ごはん1杯分をむだにしている計算です。一方で国連世界食糧計画(WFP)は年間約320万トン、食糧の足りない国に援助をしています」と、講師として招かれたディープピープルの中尾榛奈さん。
「意識が変わる、とても深い内容のゲームだった」と愛甲美奈さん(3年)。飲食店のアルバイトで食品ロスを目の当たりにしている山本真由さん(3年)は「食べ残しの理由にアレルギーもあるのだと知った。ゲームだからこそ考えやすいし、内容を吸収しやすい」と話していました。
食べられる食品が捨てられないようにするために、みんなで考えて行動しようという法律。先月24日にできました。食品ロスを減らす基本的な柱を政府が示し、都道府県や市町村が計画を立てていきます。10月は食品ロス削減月間とします。
記事の一部は朝日新聞社の提供です。