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2015年6月8日付
ナマズをウナギ味にしたら、数が減っているウナギの代わりになるかもしれない――。こんな思いつきから、クロマグロの完全養殖で知られる近畿大学で、ウナギ味のナマズが生まれました。どこまで似ているのか、記者が食べてみました。(寺村貴彰)
5月9日から31日まで、「ウナ重」ならぬ「ナマズ重」がウナギ料理の専門店「うなぎの川はら」(奈良県)でテスト販売されました。1日限定20食がすぐに売り切れてしまったといいます。
重箱のふたを開けると、脂がのったテカテカ光る身に、香ばしいにおい。はしで身をつかみ、ひとかみすると、ウナギのような歯ごたえです。ウナギよりも脂っぽくはなく、後味は白身魚のようにさっぱり。小骨がないため、小学生でも安心して食べられそうです。
ナマズ重を作った濱本弘之さんは「ナマズは体が大きいので、1匹から2人前作れます。ヌルヌル感がウナギと似てますし、調理に大きなちがいはない」といいます。
うわさを聞いてかけつけた摂南大学3年の茨木義也さんは「身がふっくらとしていて、ウナギみたい」とおどろいた様子でした。
このナマズを生み出したのは、近畿大学水産学科准教授の有路昌彦さんと、大学院生の和田好平さんです。ウナギは稚魚を取りすぎたために数が減り、養殖業者が困っています。代わりの魚をさがす計画を2009年にスタートさせました。
ウナギに近い淡水魚を日本各地から集め、かば焼きにしては味を確かめること2年間。琵琶湖(滋賀県)の北側に生息しているイワトコナマズを食べたときに、「これはいける」と思ったそうです。
ナマズは普通、どろくさく、身がパサパサしています。生態を調べると、あまり動かずエネルギーを使わない生き物。「食べた物が体に残りやすいのであれば、えさによって身の味が変わるかもしれない」と考えました。
脂を多くふくむえさを300種類の中から選んで与え、100匹以上も試して、ウナギに近づけました。栄養素もほとんど変わらないそうです。
和田さんはナマズについて店や養殖場に説明に行き、ようやく事業化のめどがつきました。
ナマズは成魚になるまで約200日。ウナギに比べて成長が早いため、かかる費用が3分の1以下におさえられます。現在は鹿児島県の牧原養鰻で年間2万匹ペースで育てていますが、来年度には5倍に増やそうとしています。
今後は、数や食べられる店を限定して本格的に販売される予定です。
このかば焼きの正体はナマズ。ウナギそっくりでしょ=5月、奈良県大和郡山市のうなぎの川はら郡山店
ウナ重? いやいや、ナマズ重です
有路昌彦さん(左)と大学院生の和田好平さん。研究室には、ウナギ味のマナマズがいます=5月、奈良市の近畿大学水産学科
記事の一部は朝日新聞社の提供です。