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電力システム改革ってどんなこと?

 

 

電気を自由に売り買いできる社会めざす


堀口元記者 朝日新聞経済部

 

ケン 電気のことで大きな改革をやることが決まったと聞いたよ。


堀口記者 「電力システム改革」のことだね。安倍晋三内閣が2日、電力の改革を3段階に分けてやると決めたんだ。

 

ポン どんな改革なの?


 

 

 

イラスト・斉藤ヨーコ

 

電気を送る送電線。今は電 力会社が発電も送電もして います??山口県下関市と福 岡県北九州市の間の関門海 峡で ©朝日新聞社

 

 

――みんなの家に電気を送ってくれる会社って、今は東京電力とか関西電力とかだよね。こうした電力会社以外の会社でも、家庭や会社に自由に電気を売れる世の中にする改革だ。太陽光や風力で電気をつくる会社をもっと増やし、競争を進めて、自然エネルギーを利用した発電を広めるねらいなんだ。東京電力福島第一原子力発電所(原発)の事故が起きて、なるべく原発にたよらない社会にする意味もあるんだよ。


ケン 3段階ってどんなふうに進めるの。


――まず2年後の2015年をめどに、地域をまたいで電気を送り合う「融通」をしやすくする組織をつくる。第2段階の16年をめどに、家庭やコンビニエンスストアなどの中小商店にも、電力会社以外の会社が電気を自由に売れるようにする。最も大事なのが、3段階の「発送電分離」だ。5〜7年後の18〜20年をめどにやることになっている。


ジャン 発送電分離?難しい言葉だわ。


――発送電の「発」は発電、つまり電気をつくること。「送」は電気を送る送電だ。電力会社を発電する会社と送電線を持つ会社に分けるんだ。


ケン 会社を分けることがどうして改革なの?


――送電専門の会社をつくったほうが、新たに電気を売る商売を始めやすくなると考えられているからなんだ。新しい会社がお客さんに電気を送りとどけるためには、送電線を借りなければならない。でも、送電線を持つ電力会社が、送電線の使用料を高くして、新しい会社の商売を邪魔するおそれがあるといわれてきた。送電線を電力会社から切り離せば、公平に電気を送れるようになると考えられている。


ジャン でも私たちにいいことってあるの?


――今は東京電力からしか電気を買えない関東地方の家も、原発にたよらずに太陽光発電だけでやっている会社から電気を買えるようになる。おとなりの中部電力とも契約を結んだほうが安いかもしれない。料金の決め方も会社の自由になるから、昼は割高で夜は安かったり、電力・ガス・電話をセットで契約すれば割安になったりと、今までなかった料金プランが生まれる可能性もある。


ポン いいことばかりの改革なら、もっと早くやればよかったのに。


――電力会社は昔から、発送電分離は問題が多いといって反対してきた。会社を分けるから、コンピューターシステムに新たなお金がかかるとか、電気を安定して送る責任がだれにあるのかがはっきりしなくなり、停電が起きるともいっている。
安倍内閣を支える自民党でも「電力会社の体力がますます弱くなる」といって、発送電分離に反対する議員が少なくない。多くの人が選挙で電力会社の応援を受けたことも影響しているかもしれないね。政府の方針では、発送電分離の法案を国会に出す時期は「2015年をめざす」と書かれている。自民党の反対で15年に出さなくてもいいような表現に直されたんだ。だから、改革がちゃんと実行されないおそれはまだまだあるんだよ。

 

過去の記事↓

◆大学生の「就活」が変わるの?(2013年4月27日)

◆原発の汚染水もれ、どういうこと?(2013年4月20日)

◆電力システム改革ってどんなこと?(2013年4月13日)

2013年4月13日付

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