朝日小学生新聞 毎日発行 月ぎめ1,720円 ブランケット版(8ページ) 朝日小学生新聞

ニュースでジャンケンポン

  

原発の汚染水もれ、どういうこと?

 

 

行き場なく増え続ける「放射能の水」


木村俊介記者 朝日新聞科学医療部

 

ジャン 東京電力福島第一原子力発電所(原発)で、放射能に汚染された水がもれたって聞いたわ。


木村記者 地面に穴を掘ってつくった貯水槽に水をためていたんだけど、いつの間にか外にもれて、土に染みこんでいたんだ。汚染水は放射性物質をたくさんふくんでいて、地下水に混じって海に流れこまないか心配だ。

 

ケン どうして汚染水があるの?


 

 

 

東京電力福島第一原子力発電所とその周りの貯水槽 ©朝日新聞社

 

 

 

――原発は核物質を燃料にして発電する。この核燃料は、原発が止まっていても熱を出すから、水で冷やし続けないといけない。事故を起こした福島第一原発では、核燃料がドロドロに溶けて、原子炉という鋼鉄製の容器に穴が開き、外に水がもれてしまった。この水は、溶けた核燃料を冷やしたものだから、放射性物質をたくさんふくんでいるんだよ。


ポン 汚染水はどのくらいの量なの?


――原子炉を冷やすのに必要な水は1日に360トンくらい。これを処理して、何度も核燃料を冷やすのに使っている。さらに地下水が毎日400トンずつ、原子炉をおさめた建物に流れこんでいる。これが混ざった分だけ毎日、汚染水が増えているんだ。


ジャン 400トンも!


――そう。学校にある25メートルプールの水よりちょっと多い量だ。今のところ、保管している汚染水は全部で40万トン近くになる。プール1千個分以上にもなって、大変な量だよ。


ポン どこかに流したらいけないの。


――それはできない。水にはたくさんの放射性物質がふくまれているから、地面や海に流せば、放射能で汚れてしまうよ。事故の直後には実際、海に流してしまい、漁業にかかわる人だけでなく、世界中の人がおこったんだ。


ケン もれないようにきちんと保管しないと。


――東電は汚染水をどう保管するか頭をかかえている。毎日増え続ける汚染水をためるため、敷地にあった森を切り開いて900個以上のタンクを並べた。地下にも七つの貯水槽をつくったよ。


ジャン なんで地下につくったの?


――タンクを設置するより地面を掘るほうがかんたんだし、たくさんの汚染水をためることができるからね。貯水槽は七つ合わせて約5万8千トンをためる力があった。


ケン どうして水がもれちゃったのかな。


――それが、よくわからないんだ。水を通さないシートを三重にしていたのに、もれてしまった。東電は、もれが見つかった後もだましだまし使おうとしたけれど、あっちこっちから水がもれていることがわかった。結局、貯水槽にためていた2万3千トン分の汚染水は、地上のタンクに移すことにしたよ。


ポン よかった。


――そうでもないよ。すぐに移したくてもタンクに空きがないんだ。タンクの設置を急いで、6月までに全部移す予定だ。その間も、貯水槽からはもれが続く。地下水に混じって、まわりに広がることも心配だ。


ケン ずっとタンクで保管するの? タンクだらけになっちゃうよ。


――そこが大問題なんだ。東電は、ゆくゆくは放射性物質を取り除いて海に流そうとしている。でも、取り除く機械はまだ試運転の段階だ。その機械を使っても取り除けない放射性物質もあるよ。うまく取り除けても、漁師さんや福島県の人がすぐには納得しないだろう。それまでは、汚染水をタンクにため続けるしかない。事故から2年以上たったけど、まだ収まっていないんだね。

 

過去の記事↓

◆憲法を変える動きがあるの?(2013年5月3日)

◆大学生の「就活」が変わるの?(2013年4月27日)

◆原発の汚染水もれ、どういうこと?(2013年4月20日)

2013年4月20日付

実際の紙面ではすべての漢字に読みがながついています。

pageTOPへ