日本の未来の形、みんなで考えよう
小村田義之記者 (朝日新聞論説委員)
ジャン 首相の安倍晋三さんが憲法を変えたいんだって。憲法って何なの?
小村田記者 憲法は国の「最高法規」、つまり法律の親分みたいなものだよ。日本はこういう国、と定めた約束ごとでもある。国を動かす人たちの権力を制限して、国民の自由と権利を守る基本ルールなんだ。
ケン 安倍さんが決めれば変えられるの?
村田記者 いや、憲法を変えること(改憲)は最終的には国民が判断する。未来の日本にかかわる話だから、よく勉強して、考えて、きちんと議論しないといけないね。
ポン 憲法にはどんなことが書いてあるの?
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イラスト・たなかさゆり |
――第1章は天皇、第2章は戦争放棄となっているね。それから、国民の権利と義務、国会、内閣、司法、財政、地方自治……。
ジャン むずかしそう。
――天皇や大臣、国会議員、裁判官、公務員らは憲法を守って仕事をしなければならない。国を動かす人たちが、権力を持って好き勝手に暴走しないように、しばりをかけているんだ。
ケン そんな大事なものを変えていいのかな。
――時代や国際情勢の変化にあわせて憲法を変えられるように、96条に改正の手続きが定められている。改正されたことは一度もないけどね。
ポン どんな手続き?
――衆議院と参議院でそれぞれ3分の2以上の議員が賛成したら、国会は国民に憲法の改正を提案する。国民に示す改正案を国会で決めることを発議というよ。そして、国民投票で過半数が賛成すれば改正されるんだ。発議のために国会の3分の2以上の賛成が必要なことと、国民投票があるぶん、ふつうの法律より改正がむずかしくなっている。
ジャン 変えるのがむずかしいのは日本だけ?
――アメリカをはじめ多くの国が、それぞれ厳しく制約しているよ。最高法規がころころ変わったら、国を治める基本が不安定になってしまうからね。
ケン 安倍さんは何を変えたいんだろう。
――96条を改正して、憲法を変える手続きをゆるめようとしている。国会の発議に必要な3分の2以上の賛成から、2分の1以上(過半数)の賛成にして、発議しやすくする考えだ。実現したら、戦争放棄を定めた9条などの改正もねらうのかもしれない。
ジャン それなら、最初から9条を変えればいいのに。
――9条の改正については、これまで国民の間で議論が分かれてきた。国内外で反発されそうな9条は後回しにして、まずは96条を変えることで改憲のハードルを下げたいんじゃないかな。快適な生活を確保する「環境権」を新しくもりこもうという声や国会のあり方などを議論すべきだ、という意見もあるよ。
ポン どうして安倍さんは憲法を変えたいの?
――いまの憲法は戦後、連合国が日本を占領していたときに作られたから、押しつけ憲法じゃないか、と反発する気持ちがあるようだ。安倍さんのおじいさんの岸信介元首相は、改憲に執念を燃やした人だった。その理念を受け継いでいるのかもしれない。
ケン これから、どうなるの?
――自民党は7月の参議院議員選挙で96条改正を争点にしようとしている。野党の日本維新の会、みんなの党なども、この問題では安倍さんと同じ意見なんだ。
ジャン すぐに改正になるのかな。
――参院選の結果、自民や維新などの議席が合わせて3分の2以上になれば、96条改正が発議されて国民投票が実現するかもしれない。でも、改憲で日本という国が本当に良くなるのかどうかは、しっかり考えたほうがいい。96条の改正が幅広い人に受け入れられるには、相当な説得力が必要になると思うよ。
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