教育委員会の責任者の選び方見直す
岡雄一郎記者 朝日新聞社会部
ケン 学校教育のしくみが変わりそうだって聞いたよ。
岡記者 教育委員会制度の見直しのことだね。政府の教育再生実行会議が先月、新しい案をつくった。知事や市長など自治体の長(首長)が、議会の同意のもとに任命したり辞めさせたりできる教育長を責任者にするやり方だ。
ジャン 「教育委員会制度」って何なの?
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イラスト・大沢幸子 |
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先月の教育再生実行会議で鎌田薫座長(左)から提言を受け取る安倍晋三首相=首相官邸で©朝日新聞社 |
――教育に関する方針を決めているしくみのことだよ。「小学校を統廃合しよう」「教科書はこの本を使おう」「この先生には、こっちの学校で教えてもらおう」などなど。いろいろなことを、都道府県や市区町村ごとに教育委員会で話し合って決めているんだ。
ポン どんな人たちが話し合ってるの?
――委員会の委員は、原則5人。「こういう人がやるべきだ」という特別な決まりはないんだ。だから、学校の先生やPTA役員の経験者、大学教授、町内会役員などいろいろな人が、首長から任命されて務めている。役所の職員ではない「素人」が入っているところがポイントなんだ。
ジャン なぜ素人にまかせるしくみにしたの?
――戦争の反省が大きいんだ。当時は政治家の思い通りに教育の中身が決められて、無謀な戦争に突き進んでしまった。
子どもたちに教えることだから、政治家によって大きく中身が変わったり、おかしな方向に進んだりするのを防ごうとしたんだ。これを「政治的中立性」というよ。
ケン 選挙で選ばれた首長も口出しできない?
――基本はそういう決まりだ。選挙の度に、使う教科書やクラスの人数が変わると子どもに悪い影響を与えかねない。教育委員を選んだり、予算をつくったりすることで今でも意見をいえるんだけど、教育委員会の方針は無視できないんだ。
ジャン 素人にまかせて大丈夫なの?
――うん。委員の会議は月に1、2回ほどしかないから、大事なことは役所の職員でつくる「事務局」で決まることが多い。いじめや体罰が起きたときの記者会見や議会でも、教育委員長は出てこないで、事務局を代表する「教育長」がほとんど説明する。教育長は役所の幹部職員がなることが多い。だから、教育委員会は「おかざり」とまでいわれているんだ。
ポン それで、変えちゃうんだね。
――「変えたほうがいい」という意見が政府の中に多いから、話し合いが続いている。「『おかざり』の委員会では責任が取れないでしょう」というのがポイント。だから、教育再生実行会議は「教育長を責任者にする」という提案をしたんだ。
ジャン みんなが賛成しているの?
――反対意見もある。例えば、「教育長ではなく、選挙で選ばれた首長を責任者にするべきだ。その人の教育が嫌なら、選挙で代えればいい」という考えだ。逆に、「首長が選ぶ教育長を責任者にすると、首長の影響が強まって『政治的中立性』が保てなくなる」という声もある。
ポン これからどうなるの?
――「中央教育審議会」という国全体の教育を考える会議が、どうすればいいか話し合いを始めた。この会議の結論を待って、政府は早ければ来年に、新しいしくみを国会に提案する予定だよ。
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