大事故対策、会社まかせやめ法律で
坪谷英紀記者 朝日新聞科学医療部
ジャン 原子力発電所(原発)の安全を守るための新しい規制基準が決まったんだってね。
坪谷記者 7月8日から新しい基準をあてはめるんだ。2011年3月の東日本大震災で、東京電力福島第一原発は放射性物質が外に大量にもれる大事故を起こしてしまった。二度と起こさないように、基準を厳しくしたよ。
ケン どんな基準なの。
――福島第一原発のような大事故が起きても、すぐに対処できるように準備を義務づけた。例えば、地震などで停電しても原子炉を冷やせるように、非常用のポンプなどを備えるようにしたよ。
ポン ほかには、どんなことが決まったの?
――福島第一原発は、大津波に発電所がのみこまれた。もしも大津波がきても大丈夫なように、防潮堤を造って防ぐようにしたんだ。
ジャン 原発事故の前はどうだったの?
――原子炉が冷やせなくなるような大事故への備えは、義務づけられていなかった。電力会社が自主的に対策をとっていただけだったんだ。
新しい基準では、法律で対策が義務づけられたよ。ほかに、津波や火山などの防災対策、テロなどに備えることを求めたのも、今回が初めてだ。
ケン 今、ほとんどの原発が止まっているよね。新しい基準ができると、どうなるのかな。
――電力会社が原発を動かすには、新しい基準にあてはまらないといけない決まりだ。あてはまるかどうかは、原子力規制委員会が調べて判断する。国の審査に合格して初めて、電力会社は原発を動かせるんだ。
ポン 審査は厳しいの?
――古い原発でも新しい基準に必ず合っていなければいけない。ぼくたちの住む家やマンションは基準が厳しくなっても、すぐに合わせなくてもいい。でも、原発は大事故が起きたら大変だから、必ず基準にあてはまらないといけないんだ。
ジャン どうするの?
――今回の基準は昔よりも厳しくなった。古い原発を基準にあてはめようとすると、たくさんのお金と時間をかけて、安全対策のために改良工事をしなければいけない。
中には、工事にお金がかかりすぎるので、古い原発は、原子炉をとりこわす「廃炉」にしようと考える電力会社も出てくるかもしれないね。
ケン 7月に早速、再稼働を申請する原発はどれくらいあるのかな。
――今のところ、九州、四国、北海道、関西の四つの電力会社が12基の原発の申請をする予定だ。どれも福島第一原発とはちがうタイプの加圧水型という原発だ。
ジャン 審査にはどのくらい時間がかかるの?
――半年くらいといわれている。今運転しているのは福井県の関西電力大飯原発3、4号機だけだ。この原発が検査で止まる9月以降は、今度の年末年始くらいまでは全国の原発が止まることになる。原発ゼロになるのは、およそ1年ぶりだよ。
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