報告書で東京高評価だが3都市接戦
阿久津篤史記者 朝日新聞スポーツ部
ジャン 東京都が2020年の夏のオリンピックを開きたいと立候補しているわね。今月3日に最後の説明会があったんだって?
阿久津記者 立候補しているのは東京、イスタンブール(トルコ)、マドリード(スペイン)だ。この3都市が国際オリンピック委員会(IOC)の本部(スイス・ローザンヌ)に呼ばれて、約90人のIOC委員に開催計画を説明したんだよ。
ポン 東京はどんな説明をしたの?
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IOC委員への説明を終え、会見する東京のメンバー。左から2人目は麻生太郎副総理、中央は猪瀬直樹知事、右はしはフェンシングの太田雄貴選手=3日、スイスのローザンヌで
©朝日新聞社 |
――お金がたくさんあるうえ、地下鉄や道路などが整っているのが強みだ。猪瀬直樹都知事が「銀行に4千億円の預金があります。五輪が決まったらすぐ使えます」とアピールしたよ。
ケン イスタンブールとマドリードは?
――イスタンブールはヨーロッパとアジアの境界にあって「東西のかけ橋になる」とうったえている。トルコの経済が発展しているのも有利だ。マドリードは競技場のほとんどがすでにできていて、お金をあまり使わない計画だ。セーリング選手として1992年のバルセロナ五輪に出たフェリペ皇太子が説明した。
ケン オリンピックを開く都市って、どうやって決まるの?
――9月7日にアルゼンチンのブエノスアイレスで開かれるIOCの会議で、委員約100人の投票で決めるんだ。
ジャン いまやってる参議院議員選挙みたい。
――オリンピックの決め方はちょっとちがう。過半数の票を取った都市がない場合、最下位の都市を外して、もう一度投票する。どこかが過半数の票を取ると決まるんだよ。
ポン どこになりそうなの?
――IOCは先月下旬、3都市を視察した結果を報告書にまとめた。イスタンブールは交通渋滞、マドリードは競技会場に問題があるといわれたけど、東京は大きな問題を指摘されなかった。報告書にはないけど、イスタンブールは反政権デモの影響も心配されている。
ケン じゃあ東京になりそうなんだね。
――それが、そうともいえないんだ。報告書では東京が高く評価されているようにも見えるけど、IOC委員がどういう基準で投票するかは、人それぞれといわれている。3都市の接戦という人が多いよ。
ジャン 報告書がいいからといって、選ばれるわけじゃないのね。
――IOC委員一人ひとりにきちんとお願いしないといけない。IOC委員の公用語は英語とフランス語なんだけど、日本人は言葉の問題もあって、IOC委員の友だちを作るのが苦手だといわれている。マドリードは、IOC前会長でスペイン人のサマランチさんのおかげでIOC委員になれた人が応援してくれそうだ。サマランチさんの息子もIOC理事を務めている。イスタンブールも「東西のかけ橋」という考え方はわかりやすい。
ケン ぼくは2020年にはとっくに小学校を卒業してるよ。そんな先のことをいま決めないといけないの?
――オリンピックは28競技で参加選手が1万人を超える大きな大会だ。競技会場も造らなきゃいけないし、準備に長い時間が必要なんだ。オリンピックの規模が大きくなって、大都市でしか開けないのは問題だという人もいるよ。
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