世界の「制裁」がきいて縮小に合意
吉武祐記者 朝日新聞国際報道部
ジャン 中東の国イランが「核開発」という活動を縮小することにしたんだって。
吉武記者 アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、ロシア、中国の6か国と話し合って決めたんだ。そのお返しに、イランの経済は少し良くなるんだ。
ケン どんなことを決めたのかな。
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【人口】7560万人
【面積】164万8195平方キロメートル(日本の約4.4倍)
【首都】テヘラン
【言葉】ペルシャ語、クルド語など
【お金】イラン・リアル |
――イランは「濃縮ウラン」という物質を作り、ため続けてきたんだ。原子力発電所や研究施設で燃料にするといっている。原子力発電では核分裂という現象を利用してエネルギーを取り出すから、この活動は「核開発」と呼ばれる。実は、濃縮ウランを加工すれば原子爆弾(原爆)をつくることもできる。多くの国が「イランは核兵器をつくる気だ」と疑い、「やめろ」といってきたんだ。
イランは今回、たまった濃縮ウランを核兵器に使いにくい形に変えたり、核開発の施設を小さくしたりすると約束した。核兵器につながらないようにしたんだね。
ジャン その代わりに何かもらえるのかな?
――そう。イランをこらしめる「制裁」という問題を少し取り除くんだ。
イランは「やめろ」といわれたのに核開発を続けていた。だから、アメリカが呼びかけて、イランの人が銀行でお金をおろせなくしたり、イランが売りたい石油を買わないようにしたりした。これが「制裁」なんだ。今回、石油を売った代金のうち42億ドル(約4200億円)がじゃまされずにもらえるようになるなど、制裁が少し取り除かれると決まったんだ。
ケン そもそも、なんでイランを疑うの?
――イランは最初、核開発の計画をかくして進めていた。また、核兵器をミサイルにのせることにかかわる研究をした、という疑いもあるんだ。
ほかの国が核開発を知ったのは11年前。これまで国際連合(国連)の安全保障理事会という会議で、核開発をやめなければ制裁を加える、という決議が4回あった。世界中の国が「やめろ」といったようなものだね。それでもイランは、核開発は平和目的だといってゆずらなかったんだ。
ポン それなのに話し合いが進んだのはなぜ?
――2年前、アメリカがイランの石油を買いにくくする制裁を強めて、日本をふくむ国々が協力したら、イラン経済はすごく悪くなった。人々の生活が苦しくて、何としても制裁を軽くしないといけなくなった。そこで今年8月に大統領になったロハニさんは、本気で話し合うといったんだ。
ケン それでいろいろ決めたんだね。
――スイスのジュネーブという都市に先月、各国の外務大臣が集まった。夜も寝ないで話し合う日もあったんだって。
イランは1979年に国のしくみが変わり、イスラム教の指導者が力を持つようになってから、アメリカと仲が悪い。30年以上、互いに敵と呼んできた。そんな国同士、相手の考えもよくきいて、濃縮ウランを核兵器に使えないようにするしくみをつくった。軍隊を使っておどすようなことをせずに、これを成しとげた。いいことなんだ。
ジャン これからどうなるのかしら?
――今回決めたことはあくまで最初の一歩。今後も話し合いは続くよ。
アメリカとイランはもともと仲が悪いから、お互いを信用し合うところから始まるね。それには今回決めた約束を守ることが大事。国際原子力機関(IAEA)という組織の人がイランに行って、約束を守っているか確かめるんだ。約束をやぶったら、アメリカは制裁を元にもどし、さらに強くするといっているよ。
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