攻撃された仲良しの国と一緒に戦う
朝日新聞論説委員 高橋純子記者
ケン きょうは憲法記念日だね。憲法をめぐって「集団的自衛権」っていう言葉をニュースでよく聞くけど、なんのことかな?
高橋記者 難しい言葉を知っているんだね。でもその前に、そもそも戦争はやっていいことかな?
ポン それは、やっちゃいけないことだよね。
高橋記者 そう。第2次世界大戦後にできた国際連合(国連)は、加盟国が軍隊の力を使うことを禁じているんだ。その代わり、ある国が武力によってほかの国を攻撃した時に、加盟国みんなが力を合わせて攻撃をやめさせることにした。これが「集団安全保障」だ。
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▲日米共同の弾道ミサイル防衛特別訓練に参加するため停泊する日本のイージス艦(右から1、2番目)と米国のイージス艦=2月28日、米海軍横須賀基地 ©朝日新聞社
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イラスト・すぎうらあきら
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ケン 実際にどんなことをするの?
――国連は、攻撃をしかけた国に対して、経済的に罰を与える。それでも攻撃をやめないなら、加盟国が結束して軍隊を組織して反撃する。だけど実際は加盟国の意見が一致しないことが多くて、うまくいっていないんだ。
ジャン じゃあどうすればいいの?
――国連憲章は、攻撃を受けた国が、自力で反撃する権利を認めている。これが「個別的自衛権」だ。さらに、攻撃された国と仲良くしている別の国が、攻撃された国からのお願いを受けて、一緒に反撃する権利が認められている。これが「集団的自衛権」なんだ。
例えば日本が攻撃されたら、日本は個別的自衛権で反撃する。そして日本と安全保障条約を結んでいるアメリカ(米国)は、集団的自衛権を使って、日本と一緒に反撃する権利を持っているんだ。
ケン 日本は、集団的自衛権を使う権利を持っているの?
――権利は持っているけど、使うことはできないというのがこれまでの日本政府の立場だよ。
日本は個別的自衛権は持っている。だけど、日本が攻撃されたわけではないのに、集団的自衛権を使って他国を助けるために軍事力を使うことは許されない。これが、政府がずっと言ってきた憲法9条の解釈なんだ。
ジャン 安倍晋三首相は、その解釈を変えようとしているんだよね。
――そう。米国に守ってもらうだけで、米国が攻撃された時に反撃に加われないのはおかしいと主張しているんだ。だけど日本は米軍に基地を提供しているし、お金も負担している。一方的に守ってもらっているわけではないんだよ。
ポン 解釈の変更って簡単にできるの?
――政府はずっと@集団的自衛権を使うことは許されないAこの解釈は変えられないB集団的自衛権を使えるようにするためには憲法改正をしなければならない――と言ってきたんだ。だけど安倍首相は、閣議で「解釈を変えました」と決めてしまえば変えられるんだと言っている。
これには専門家からは敗戦後、憲法9条のもとで「平和国家」として歩んできた日本が大きく変わることになるのだから、解釈の見直しなんかで済ませず、憲法を改正すべきだと批判の声があがっているんだ。
ケン 「日本が大きく変わる」って、どうなるの?
――例えば、日本はこれまで、米国に「外国で一緒に戦おう」と言われても、「憲法9条で集団的自衛権は使えないから」と断ることができた。だけど使えることにしたら、断ることが難しくなるだろうね。日本の利益とは直接関係のない「地球の裏側」に自衛隊を派遣して、戦わせなければいけなくなる可能性もある。それが本当に日本にとっていいことなのか。みんなでこの問題を徹底的に議論しないといけないよね。
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